短編ログ | ナノ
幼い子供たちには物語を

凄い。

学校では頼りない沢田に、こんなお兄さんっぽいところがあったなんて。
私は目の前で繰り広げられている光景を知らなかった。

沢田に悪いと思ったのだが「どうしても、」と言われたので私は来ていた。
どこにと言うと、沢田の家へだ。

沢田が言うには、学校であったことを母親に何となしに話したらしい。
きっと私の名前を言ったのだろう。
沢田のお母さんが私に御礼をしたい、と言い出したそうだ。

給食が無いときなんかの沢田のお弁当はおいしそうだったし。
それに、今日はご馳走をしてくれるそうで、楽しみだった。

そして今、私は沢田の家の前で立ち尽くしていた。
指先にはインターホンがある…これを鳴らそうか鳴らすまいかで迷っていた。
はじめてのお宅訪問だ、沢田のお母さんには私のことを好印象で見てもらいたいと思うじゃないか。

私は乱れているであろう髪の毛を手櫛でささっと整える。
そして軽く深呼吸をして、ついにインターホンを冷えた人差し指で押した。

ピンポーン、無機質なその音が中からのバタバタと言う子供の足音に変わった。
そしてその後から、沢田の声が聞こえてきた。(沢田には、弟さんか妹さんがいるのだろうか?)


「いらっしゃい、今日は来てくれてありがとう」
「あ、うん。今日は招待してくれてありがとう」

「わぁー お姉さんがツナ兄の言ってた人だね?はじめまして、僕フゥ太!」
「わたし イーピン!」
「がははー オレっちはランボさんだもんねぇ!!」


沢田よりも頭一個分くらい背の低い男の子と、チャイナ服の子と牛柄の子。
この子たちは沢田の弟さん妹さん…にしては似てはないな。

兄妹って彼に尋ねてみたら「ちっ違うよ、居候なんだ!」と答えた。
それに奥から綺麗なお姉さんともう一人、沢田によく似た顔に人が現れた。

沢田が「ビアンキ」と呼んだ人は、獄寺のお姉さんだそうで…この方も居候さんだった。
そして、私が沢田のお姉さんだと思ったその人が、沢田のお母さんだった。


イッツ ア ミラクルな世界です、ここは。
取り敢えず、リビングに上がらせてもらうと、そこにはエスプレッソを味わう赤ん坊が…
沢田は焦っているが、私は山本の言った「緑のカメレオンを帽子に乗っけててちっこい坊主」を理解することになる。


幼い子供たちには物語を


end

2010.12.18
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クリスマス企画5

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