短編ログ | ナノ
忘れていたとは言わせない

眠い。

温かい教室の中で、先生の無駄に長い数式の説明を聞きながらうとうと。
斜め前の席の山本なんか、教科書立てて寝ちゃってますからね。

うとうととしながらも、頑張って起きなきゃって。
そんなこと思いながら睡魔と格闘してる私はエラいのよ。
少なくとも、山本よりは。

先生の説明のあと、練習問題を数問解いてゆく。
私は塾に通っているために、ここの問題はすでに習っていたので簡単に解けた。

隣りでうなっている彼は、沢田だ。
彼はクラスの中でもあまり、頭は良い方ではなかった。

しかし、私はここ最近授業で彼の困っている姿は見ていない。
京子の話によると、家庭教師が家に住み込みで働いているらしい。
山本が言うには、緑のカメレオンを帽子に乗っけててちっこい坊主だそうだ。

それに、マフィアごっことか言う遊びをみんなでやってるらしい。
まだ私はその家庭教師のちっこい坊主は見たことがない。

窓の外へ視線を向けると、寒いのに何処かのクラスが長距離走をしていた。
こんな寒空の中、嬉しくないのに走らされてかわいそうだ。
知り合いと目が会った気がして、苦笑した。


隣りの沢田へと目を向けると、三問目から進んでいなかった。
彼はどうも数学が苦手なようだ。

私は仕方ない、と彼にそこの解き方を教えてやった。
案外、彼の飲み込みは早く、私が思っていたよりも早く最後まで解いてしまった。
彼には内緒だが、ちょっと見直した。


「沢田って、案外頭いいのかもね」
「えっ!? そんなこと…ないよ、」
「じゃあ、家庭教師のお陰とか?」
「えぇ!!?? 何でそのこと知ってるの!!」


私が家庭教師のことを話題にすると、焦ったように声を荒らげた。
もちろん、授業中なので多少は抑えていたが。

後方からのするどい視線。
それを受けながらも、数学の授業はチャイムと同時に終わっていった。
あ。そう言えば次の授業は体育じゃん…


忘れていたとは言わせない


end

20101216
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クリスマス記念2

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