深夜の電話のコール音。
私はある仕事でホテルに泊まっている。
まったく、こんな時間に誰よ。
私はさっきまで仕事をしていて、くたくただと言うのに…
「―――もしもし?」
「………俺だ」
いつもなら、自分から滅多に電話なんてしてこない私のボス様。
八年間のブレークと、その後十年以上の付き合いの中で彼から電話をかけて来たのは両手で数えても余るくらいだ。
そんな彼の受話器越しに聞こえる声に私は驚いて、さっきまでのイライラなんて吹っ飛んでしまった。
「あぁ、ザンザス? どうしたのこんな時間に…あなたからなんて珍しいわね」
「………」
そういうと、彼は黙ってしまう。
口数の少ない彼ですものね。
私はそれを察して、少しだけ笑った。
「もしかして、任務の事かしら?
それだったら安心してもいいわよ。
順調に進んでるし…今日はターゲットと接触できたの」
「……そうか」
昼間にターゲットと接触した事を話すと肯定を返してきた彼。
私はベッドの端に座り直して、灯りをつけた。
「あ。もしかして次の任務の連絡だった?」
「……違う」
珍しい彼からの電話だったから次の仕事の連絡かと思いきや、違うと否定されてしまった。
「そう。それなら良かった……あと二日位したら帰れると思うわ。
待っててよね?」
待っててよね、なんて言う筋合いはないけど。
今日の彼は、なんだか機嫌がいいみたいだからちょっと言ってみた。
すると―――
「…そうだな、早く帰って来い」
「……!」
本当に今日の彼はどうしてしまったのだろう?
傍若無人で、自分以外の人間にはいつも見下して言うあの彼が私に早く帰って来い、などと言う日が来るとは…
もしかしたら、明日は槍が降ってくるかも。
だけど、そう言ってもらえた事が嬉しくて、私は笑った。
「えぇ、分かってるわ。なるべく早く済ませて帰ってくる様にするから」
「………」
「ザンザス? ……切らないの?」
話ももう済んだと思うのに、一向に電話を切らない彼。
なんだろう?まだ話があるのかな?
「………」
「ねぇー、無視しないでよ。…ちょっと、聞いてる?」
「………今日は」
「ぇ?」
「今日はお前の生まれた日だろうが、ドカスが。」
受話器越しに呆れた様に呟いた彼。
あぁそうか。だから彼は電話を切らなかったんだ。
「……!ぁ……ホントね、」
「自分の生まれた日くらい覚えてろ」
「そうだね、ごめん。 忙しくて日にちの感覚が可笑しくなってたみたい」
どうやら、昼間の間も私の携帯に電話をしたそうな。
でも丁度その時間帯はターゲットと接触していた時間とバッチリ当たっていて、マナーモードにしていた私はザンザスからの電話に気付けていなかった。
その事を話すと、彼はいつものような不機嫌そうな低い声に戻ってしまったけど、どこか優しい声音で…
「……名前」
「なに?」
『おめでとう。』
祝ってくれた。
本当はお前に直接会って、電話でじゃねぇ。
顔見て目を見て、俺からお前に言いたかった。
だけど、仕方ねぇから…
「特大のケーキを準備して待っててね!それじゃあ、おやすみ――」
「…………」
「…ザンザス?」
「………切りたくねぇ」
「……!」
だから、早く帰って来い。
夜が明ける前にな。
end
20101118
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由ノ丞様へ誕生日記念(∀`*)
おめでとうございまっす!
《夜が明ける前に、あとがき》
由ノ丞さん、お誕生日おめでとう!!
と言うことで、これは愛しの君へ、の由ノ丞さんへ捧げるボス夢です。
由ノ丞さんと知り合ってから、まだ日は浅いわたしですが
心を込めて、お誕生日を(ボス夢で)祝わせてもらいました!
私のものは上手くはないと思いますが、由ノ丞さんに
喜んでもらえたらいいなぁと一生懸命書き上げました。
こんな駄文で祝ってしまって、申し訳ない……(・ω・`)
だけど、由ノ丞さんに喜んでもらえれば、わたしは幸いです。
それでは、由ノ丞さん。これからも私と仲良くしてやって下さい。
吉田より、由ノ丞さんにたくさんの愛を込めて!
20101118
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