モノクロハート | ナノ

人形師


「ぐへぇ!!」
「ひどい目に遭いましたよこれで目覚めなければ僕らも被害者リスト入りでした」

 セレウスとシグナルが目を覚ましたのは狭い仮眠室でのことである。
 円いテーブルの上に置かれたスペードが描かれた紙をつまみ上げる黒い手袋の間から金の粉が零れ、床の木目へと入っていった。


「変な声出してないで行きますよ先輩。署長に報告しないと」
「シグナル、待ってって! その粉がないと夢想世界に行けないんだから大事に扱えって!」
「一つまみでいいんですよ? 四つに分かれた夢想世界のシンボルマークを書いた紙があれば行けるでしょう。何です? もっかい行きたいんですか?」
「手ぶらで行ったら約束が違うだろ!」

「おーいお前らさっさと行ってこーい」
「「署長!!」」


 がらりと開いたドアから署長が光沢のある紙をひらひらと見せながら少しとげのある声で言う。
 光沢のある紙の中には赤い文字列と倒れた人間が映っているが、それはどうも警官のようである。


「ハリフォードが血文字で伝えてきやがった。うちの警官が一人手紙がわりにされた上重体だ。内容は大体わかったからさっさと行ってこい。資料はこいつを使え」


 署長が投げて寄越したのは一冊のノートだった。
 最初のページには0から7まで番号がふってあり、その殆どが空白だった。



「署長ぉおおお!!!! 手がかりなさすぎですよ署長ぉおおお!!!!」
「アンバランス人形を探せば大体捕まりますよ先輩。さ、行きますよ。天才人形技師が創った生きた人形を捜しにね」



 白と黒の警官は署長に敬礼すると部屋を出ていった。
 見送った署長はひとつ息をはく。


「“願い事が叶うまでは警官で我慢してあげる”か。ほんと、頼んだぞ。眠った相手が誰であれ、奴からは干渉自由なんだからな……」




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