松風天馬×剣城京介

※注意※

短編になったので、こっちに載せました。

この話は明るくないです。

むしろちょっとグロいかも…

流血表現、死ネタ苦手な方は回れ右をオススメしますm(_ _)m

大丈夫な方はそのままどうぞ♪























+---+---+---+---+



───煩い蝉の鳴き声で目が覚めた。

目が覚めたと言っても時計を見るともう昼の12時32分。



「………寝過ぎた…」



頭が重い。

窓の外はウザいくらいの快晴で。

汗でぐしょぐしょになっていたシャツを脱ぎ、別の服へと着替える。

そのまま蒸し暑い部屋の中に居るのも嫌で、外へ出た。

部屋の中よりマシだと思っていたが、何しろ今日は8月15日。

真夏の強過ぎる日差しの下、俺はくらくらと目眩さえ感じていた。

………病気にでもなってしまいそうだ。

フラフラとおぼつかない足取りで辿り着いたのは、たまにサッカーの練習で足を運ぶ公園だった。

見渡して見ると一緒の部活で毎日練習している、見知った奴の姿を見つけた。

そいつは一人でただ、ボールを蹴っていた。



「………松風」



思わず名前を呟くと、そいつは振り返った。



「ん?………あ、剣城!どうしたの、こんな所で?」

「部屋の中が暑過ぎて、外ならまだマシかと思って出て来た。………松風は?」

「ん〜俺もそんな感じかな〜………。部屋にいたら暑くて暑くて!」



そんなたわいも無い会話をした後、松風はまた、ボールを蹴り始めた。

俺は近くのベンチに座り、その様子をただ眺めていた。



「俺、夏って暑いから嫌いなんだ」



ボールを蹴りながら、松風はふてぶてしく呟いた。



「俺も、夏は嫌いだ………」



その背中に向かい、俺も呟いた。



「あっ」



少し強く蹴り過ぎてしまったみたいだ。

松風の蹴ったボールが、道路の方へコロコロと転がって行く。

松風はそのままボールを追いかけ道路へと走って行く。

俺はその後ろ姿を見ながら、半ば呆れて溜め息を吐いた。

しかし、次の瞬間。

全てがスローモーションの様に見えた。

松風は赤に変わった信号機に気付かず、そのまま走っていた。

俺はそれに気付いた。

しかし、暑さのせいか頭は直ぐに働いてくれず、俺は力の限り叫んでいた。



「っ、松風っ!」

「………え?」



松風が気付いたと同時に、その身体は横切って来た大型のトラックによって轢きずられていた。

トラックは松風の身体を轢きずりながら泣き叫んだ。

松風の身体からは、



ぐしゃ。



とても嫌な音がした。

そしてそのまま松風の身体が有り得ない角度へ曲がり、血飛沫が上がる。

松風の身体から流れる血の匂いと、そこから上がる血飛沫。

混ざり合ったそれらが俺の身体を襲い、むせ返った。

数秒後、何処からともなく悲鳴が上がった。

俺は、足が地面にへばり付いてしまったかの様に、その場から動けなかった。



「ぅ、嘘だろ………?」



俺は一人で呟いた。



“嘘じゃない”



耳の奥に聞こえた、そんな言葉。



「ぇ………?」



道路の向こう側に見えたのは、帽子を深く被った、少年。

しかしその姿は曖昧で、今にも消えてしまいそうだった。

顔のパーツで唯一見えた口元は、ニヤリと笑みを浮かべていた。

俺はその時思った。

今の言葉を言ったのは、この少年なんじゃないか、と………。そこでまた目眩がした。

今日感じた中で一番強かった。



「………ッ!」



耐えられなくなり、俺はその場に倒れた。

そこからの意識は、無い。

ただ、煩い蝉の鳴き声だけが、頭の中で響いていた。



+---+---+---+---+



そこで俺は目覚めた。



「………ッ!」



ベッドの上、時計を見ると12時3分。

カレンダーを見た。

8月14日。



「はぁ〜………」



ただの夢だったみたいだ。

やけにリアルな夢だった。

それにしても暑い。

暑過ぎる。

汗でぐしょぐしょになっていたシャツを脱ぎ、別の服へと着替える。

そのまま蒸し暑い部屋の中に居るのも嫌で、外へ出た。

部屋の中よりマシだと思っていたが、何しろ今は夏休み真っ只中。

真夏の強過ぎる日差しの下、俺はくらくらと目眩さえ感じていた。

………病気にでもなってしまいそうだ。

フラフラとおぼつかない足取りで辿り着いたのは、たまにサッカーの練習で足を運ぶ公園だった。

見渡して見ると一緒の部活で毎日練習している、見知った奴の姿を見つけた。

ん?

そこでふと思った。

俺はここまで、昨日見た夢と全く同じ事をしている。

じゃあ次は………



「………松風」



俺がそいつの名前を呟くと、少し遅れてそいつは振り返る。



「剣城!どうしたの、こんな所で?」

「部屋の中が暑過ぎて出て来た。………松風は?」

「俺もそんな感じかな〜部屋にいたら暑くて暑くて!」



会話の内容も夢と殆ど同じ。

と、言う事は………

俺は近くのベンチに座り、松風がボールを蹴るのをただ眺めていた。

偶然にしては、昨日見た夢とリンクし過ぎている。

夢の通りに事が運べば、次は松風がトラックに………

いやな予感がする。

昨日見た夢が正夢だという事だろうか。

しかし俺はそんな非現実的な事をすぐに信じてしまうほど、子供ではない。

“ただの偶然”だと、そう思うことにした。

松風がボールを蹴っている。



「あっ」



ふと、松風がボールを蹴り損ねた。

コロコロとボールは、そのまま道路の方へ転がっていく。

俺ははっとして、ボールを追いかけようと駆け出した松風の腕を掴んだ。



「………え?」



………パンッ!



松風が不思議そうな顔で振り向くと同時に、転がっていったボールが大型トラックに潰され割れる音がした。

松風は、いきなりの出来事にただぼーっとしていた。

そして俺は松風に言った。



「松風………今日は、もう帰ろう」

「うっうん!………剣城、助けてくれてありがとう」

「いや………無事で良かった」



この会話は夢ではしなかった。

………正夢にならなくて良かった。

この時は安心したんだ。

………この時は。

二人で帰り道を歩いていた。

とあるビルの前を通り過ぎようとした時、周りの人がみんな口を開けたまま上を見上げているのに気付いた。

何だと思い上を見上げると、黒い影が目の前の視界にだんだん入り込んでくるのが見えた。

その時だった。



ドンッ!!!



強い力で横から押された俺は、バランスを崩しその場に倒れた。

痛いと感じた時、今度は視界に赤い液体が飛び散った。

誰かの悲鳴が、聞こえた。



「きっ、きゃあぁぁあぁぁぁッ!!!」



それはもう、悲劇を通り越した………。

そう、まさに“地獄”だった。

見上げた先で松風に何かが突き刺さっている。

よく見るとそれは鉄骨だった。

さっき俺の上に落ちて来たのがこの鉄骨で、松風は俺を庇う為に俺を押した………。

呆然とする頭でそれを理解するのに少し時間がかかった。



「うっ………うわあぁぁあぁぁぁッ!!!」



思わず一瞬後ろに仰け反ったが、すぐに松風の所に駆け寄った。

胸に鉄骨が突き刺さり、痛々しい姿で倒れている松風が、うっすらと目を開けた。

辛そうな顔のまま、血だらけで言った。



「………さっき、助けてくれたお返し…」

「なっ何言ってんだよ!おい松風!」



松風の目が、閉じていく。



「ふっふざけんな!………死ぬな!松風ぇっ!」



松風の胸の辺りに刺さった鉄骨。

夥しい量の血。血、血。

夢なら、早く覚めてくれ………。

目を瞑り、拳を強く握り、祈った。

その時だった。



“夢じゃない”



また聞こえた。

この声、聞き覚えがある。

前を見ると、輪郭の曖昧な少年がそこに立っていた。

やっぱり、帽子を深く被っており、顔はよく見えない。

ただ、口元は笑っているのが見えた。

ニヤリと妖しい笑み。



お、お前っ………



声を出そうと立ち上がった時、また強い目眩。



「………ッ!」



その場に倒れる。

その後の記憶は、無い。



+---+---+---+---+



………あれから、何回繰り返しただろう。

目が覚めて、暑くて、外に出て、公園に行ったら、松風に会う。

道路を避け歩道橋を渡ろうとすれば松風は階段から落ちた。

頭の打ち所が悪かったらしく、死んだ。

俺が呆然としていると、何故かいつも少年が見える。

そして、少年の姿が見えれば強い目眩により俺は倒れる。

パターンは他にも幾つかあったが、毎回ラストはこうだった。

何回も、この繰り返し。

俺は、目の前で松風が死ぬのを、何十回いや、何百回と見てきた。

………エンドレスだ。

目が覚める度にカレンダーを見ても、日付が進まないのだ。

どうすれば終わる?

何百回目かのベッドの上で、俺は考えた。

そして………。



+---+---+---+---+



松風がボールを追い掛ける。

信号は赤。

視界の隅に、トラックが見えた。

その時、俺は横から松風を思いっきり押した。

そして自ら道路に飛び込んだ。



松風、ごめんな………。でも俺にはこの方法しか思いつかない。松風が生きていてくれれば、俺は死んだって良い。

あぁ、俺、死ぬのかな………。



ドンッ



鈍い音がした。

身体が痛い。

自分の身体が吹っ飛び、空中で俺はまた、あの少年を見た。

口惜しそうな表情。

何か言いたげに唇を噛んでいた。



ザマァミロって心の中で呟き、笑ってやった。

これで終わると、思った。



視界に自分の血飛沫が広がる。



ドンッ!!!



地面に、叩き付けられる。

不思議と、痛みはあまり感じなかった。

そして俺は意識を失った。



+---+---+---+---+



「………」



またか、と目を覚ます。



「サスケ。………また駄目だったよ」



ベッドの上、犬を撫でている少年。

弱々しい笑みを浮かべながら、松風天馬は一人呟いた。

この夏、俺は死ぬという事が決まっている。

剣城は、命を懸けてまで俺を守ろうとしてくれていた。

しかし、運命なんて変えられない。

途中からお互いに気付いてはいたんだと思う。

“松風天馬は死ぬ”



だが、剣城がこの事実を受け入れてくれないと………



永遠に続くみたいだ

俺の覚悟はもう出来てる

あとは、

剣城次第だよ?



早く、俺を楽にして………



+---+---+---+---+





end.


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