胸にいろんなものが詰まり過ぎて、心がぎしぎしみしみしと音をたてて、溢れ出た感情が涙と嗚咽に形を変えて体の外に出るのだけど、その現象は苦しくて仕方がない。なにもかもの重力に押しつぶされそうで、わたしは畳に体をふせる。
誰かに助けて欲しい、ここから救い出して欲しいと願うけれど、それは誰に対しての懇願なのかはわたしにだってわからなかった。所詮、自分を救えるのは諦めとか開き直りとか、そんなことばかりがわかっても、救えないものは救えないから、救われない。

「やっぱり、泣いてると思った」

襖が開いて、冬の陽射しと冷たい風が暗い部屋に色を戻した。寒いし眩しいし早く閉めて欲しくて、顔を上げて声の主、山崎さんを睨んだけれど、彼は哀れむような表情で笑いながら、襖を開け放したまま部屋の中に足を踏み入れる。

「大丈夫?」

よいしょ、と呟きながらわたしの前に胡座をかいて座る。涙やら鼻水やらでぐちゃぐちゃに濡れたその顔を見られたくなくて顔をふせると、頭に優しい重力が加わった。温かい頼りないその手でわたしの頭をそっと撫でて、元気出しなよ、なんて安っぽい言葉を吐いて、山崎さんはわたしを慰める。救う術など知らない癖に、救ってくれる気など毛頭ない癖に。心の中でそんな悪態をついて、わたしはどうにか自分を保つ。

「饅頭を、貰ってきたんだけど食べないかな」

甘いものでも与えれば、わたしが元気になるとでも思っているのだろうか。癇に障る。無視を決め込むけれど、感情が揺れたせいか嗚咽が漏れた。山崎さんは「駄目かー」と苦笑いを滲ました口ぶりで言った。再び山崎さんの手がわたしの頭に触れる。今度はあやすように、ぽんぽんと頭を撫でた。優しい重力、だけどそれもやっぱり重力だ。重たい、苦しい。わたしの涙は止まらない。けれどどうしようもなく、その手に縋りたくなってしまう。それはわたしが弱く、まだ子どもであることの証明だった。



<061128→131117>加筆修正
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