「洋梨たべる?」

ことり、とテーブルにお皿を置くと、黒門はやっと本から顔をあげる。さっきまではこちらが呼びかけてもうんとかすんとしか言わなかった癖に現金な奴だ。読んでいた本を置いて「食べる」と差し出したフォークを手に取る。

「っていうか本返しにきただけなんじゃなかったの」
「まさか炬燵が出てるなんて思ってなかったからな」

しゃりしゃりと洋梨を食べている間はおしゃべりにお付き合い頂けるらしい。

「黒門の家こたつとかなさそう、床暖房とかついてそう」
「よくわかってるじゃないか」
「さっさと帰れセレブ」
「洋梨出してもてなしてる奴の言う言葉じゃないな」

最後のひとかけを飲み込んだ黒門は嫌味ったらしく笑って立ち上がった。

「あれ、ほんとに帰るの?」
「洋梨食べたら用はなし、ってな。これ借りてくぞ」

高校時代の担任仕込みの駄洒落を言い残し黒門は帰っていった。部屋の中がひどく寒い。

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