「はち、なにしてんの」

中庭の端っこでこちらに背をむけてしゃがみ込む男に話しかけると、「おお」と間の抜けた声が返ってきた。もさもさとした頭越しにその手元を覗き込むと、きれいな青色をした小鳥が八左ヱ門の手のひらに乗っていた。

「え、死んじゃったの?」
「死んでねえよ、怪我してるみてえだから手当しようと思って」
「きれいな色してるねえ」

生物委員の小屋へと向かう八左ヱ門に並んで歩く。青い鳥は幸せを運ぶらしいよ。そう言うと、八左ヱ門は「だからお前がきたのか!」とはずかしげもなく笑った。こちらとしては恥ずかしく、しかしその笑顔にときめいてロマンチックな雰囲気に浸れるような季節はとうにすぎてしまった為、八左ヱ門の尻に蹴りを一発喰らわすことでその場を流す。怪我をしてまで運んできた幸せがこんな形でがっかりしたのだろうか、八左ヱ門の手の中にいる小鳥は弱々しく「チュン」と鳴いた。ごめんね、けれどこれだってあるひとつの幸せの形だ。「いてえよ!」と相変わらず笑う八左ヱ門の顔を見てそう思った。

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