食堂の奥の方の席で向かい合って座る池田とわたし。それぞれの盆の上を池田の箸がすいすいと動く。箸によって運ばれているのは緑色の小さな豆粒だ。

「そんな髪の毛の色しておきながらグリーンピース嫌いとかほんと理解に苦しむんだけど」
「うるさい、黙ってありがたく受け取れ」
「・・・全部そっちの皿に戻そうか?」
「すみませんどうぞその胃袋にお納めくださいこの緑色の悪魔を」

はあ、とそちらに聞こえるように大きくため息をついてから、皿の隅にこんもりと山をつくるグリーンピースに箸をのばす。鼻に抜ける独特の匂いも口に残るぱさぱさとした食感も、いまだ好ましいとは思えないけれど、こう何年も大量に食べ続けていれば慣れはするもので、昔のように顔をしかめたくなるのを我慢しながら食べることはなくなった。

「お前ほんとよくそんな平然と食べられるな」
「池田もいい加減自分で食べられるようになりなよ、っていうかわたしが一緒じゃないときどうしてるの?」

まさか川西とかに押し付けてる?そう聞くと目の前のグリーンピース頭はにっこり笑って、いいや、と否定を口にする。

「とりあえずお前のこと探すかな」

その言葉にどきりと、身を固めてしまった自分が情けなくて恥ずかしくて、それをどうにか隠そうと呆れたふりをしてがくりと項垂れた。この馬鹿は知っているだろうか。この忍術学園に入った頃、わたしがとても好き嫌いの激しいこどもで、ピーマンに茄子に人参に、そしてこのグリーンピースだって食べられなかったことを。そんな折、好意を寄せ始めていた緑色の髪の毛をした少し意地悪な忍たまが、「お前グリーンピース食べられる?」なんて尋ねてきたものだから、ついつい首を縦に振ってしまったことを。口の中に広がるその匂いと食感にえづきそうになりながらも必死に食べたあとの「ありがとうな」という言葉と笑顔に、嬉しくってこそばゆい気持ちになったことを。その言葉と笑顔が欲しくて、それ以来大嫌いな緑色の豆を平気な振りをして食べ続けたことを。

「なんでか大体見つかるんだよな、運命?」

下に向けた顔が笑いそうになるのは、机の下の向こう側、池田の足を思い切り蹴ってやって、痛がるその様を笑うふりをしてごまかすから、どうか頬が赤くなってるとか、そんなことにはなっていませんように。

<120922>
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テーマ「人外ファンタジー」
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