「せんぱーい!」
「助けてくださあーい!」

学園長先生のおつかいを終えて、さあ学園に戻ろうと歩いていたところだった。声のした方振り返ると、真っ青な空を背負って小さい影が猛スピードでこちらに向かってくる。ぎょっとして目をこらしてよく見ると、その影は一年は組のよい子たち、しんべえと喜三太だった。その後ろからはなにやらみすぼらしい、ちりちりの髪の毛とぼろぼろの衣服を身にまとった男が鬼のような形相で二人を追っている。状況はよく飲み込めないけれど、かわいい後輩がくせものに追われてピンチであることだけはわかった。

「しんべえ!喜三太!どうしたの」

へろへろになりながらこちらへ走って来た二人を背に庇い、くせものに対峙する。くのたまだって、やる時にはやらねばならない。かわいい後輩は体を張ってでも守る。

「それが・・・」
「立花先輩が・・・」
「立花?って立花仙蔵先輩?」

「おい、その二人をこちらに引き渡せ」

よく見ると二人を追っていたくせものは、六年い組の立花仙蔵先輩であった。ほとんど原型をとどめていないのでわからなかった。いつものサラストヘアーと透き通る白い肌、そして飄々とした雰囲気、全て失っている。別人である。

「な、なにがあったかは存じませんが、二人共おびえています」
「訳などお前は知らんでいい、そいつらいっぺんシメる」

ぬるっとした湿り気が着物の背中や腕にからみついている気がするが、とりあえず怖がっている後輩をやすやすと引き渡すわたしではない。たとえ相手がそれなりに尊敬する先輩であっても、だ。

「と、とりあえず、話を聞いてからにしますよ」

なにがあったの?ふたりとも。ちらりと後ろを見遣りながら尋ねると、二人はおずおずとそれに答える。

「学園長先生の命令で立花先輩の任務のお手伝いに行ったんですけど」
「作戦の途中で敵の城兵に見つかってしまって」
「立花先輩が僕たちを助けようとしてくれたので」
「それを応援しようと思って」
「この焙烙火矢を投げたんです」

こーうやって。

ととん、とわたしと立花先輩のちょうど中間地点に、丸い物体が転がった。導線はちりちりと火花を散らしている。目の前にいる立花先輩の顔は真っ青だ。それらのことが連れて来る未来を理解するのと、その瞬間が訪れたのは、同じタイミングだった。<120422>
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