天気のいい日が続いている。青い空には雲がひとつも見当たらない。昼飯も食べ終わって部活に備えて睡眠でもとろうかと思い、ひんやりとした机に上半身を伏せながら窓の外を見た。心地よいざわめきのなか、目を閉じる。ああ、すぐにでも眠りにつけそうだ、

「いずみー、わたし猛烈にアイスが食べたい」

とか思ったらこれだ。人生そうそう甘くない。席替えをして一週間、名字の前の席になってから、こいつのこの下らない呼びかけを無視することは無理だと学習したので、渋々体を起こす。

「おー、買いに行ってきな、出来れば二個、俺の分も」
「ほざけ、髪の毛むしりとるよ」
「こわっ やめろ」
「まあね、そのうち機会があればアイスくらいは奢ってあげるけどさ」
「は?なんで今日じゃねーんだよ…」

話していたら俺まで猛烈にアイスが食べたくなってきて、本当になんで今日じゃないのかと悔やんでいると、名字は自分の財布を差し出してきた。なに、くれんの?と聞くと、「まじでむしるよ髪の毛」とわりと本気の目で返された。

「ちょっと見てごらんよそのお財布さん」
「はあ?」

言われた通り適当に財布の中を見たら、なんとも物悲しい気分になった。

「ね、奢るどころか自分の分すら買えないんだよね」
「…なんか俺までテンション下がったんだけど」

残金58円て。新宿二丁目のみなさんもびっくりだって。どんだけ〜。

「まあそこで泉に提案なんだけどさ、」
「俺は奢らねーぞ」
「人の話を最後まで聞け」
「あーはいはい」
「パピコ半分こしない?」

50円ずつで、どうでしょう。そう言って名字は50円玉を目の高さに掲げた。確かに、悪い話じゃない。

「よし、乗った!」
「やった!」

自分の財布からも50円を取り出して、少し上がったテンションで購買に向かった。



「わたしマンゴー味のやつがいい、期間限定の」
「却下、無難にチョココーヒーで」
「あーあ、守りに入っちゃって嫌な子!」
「うっせ」

<070717>
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