まさかの、である。せっかくの土曜日。けれどわたしがいるのは学校。まさか、補習とは。た しかに昨日の小テストの結果は散々だったけれど、どうしてわざわざ休日にやるんだか。多分、ノート提出すらしなかったからだ。憂鬱な気分で下駄箱から取り 出した上靴を床に落とす。静かな空間に大きく音が響いた。

廊下を歩きながら思うこと。こういう不都合な休日の太陽はひどく憎らしく思える ということ。窓の外の緑がまぶしくて、心底嫌な顔をしてやった。もちろん、誰も見ていない。ため息をひとつ吐いて、職員室の扉に手をかけたその時だった。 隣にある数学準備室の扉が音を立ててあいて、聞き覚えのある声が「失礼しましたー」と鳴った。

「あら泉じゃん、」
「あれ名字じゃん、何してんの」

口に出すのもなんだか憂鬱で、何も言わずに死んだ目をしてやると泉は納得したように、ああ、と頷いて「ご愁傷さま」と口にした。そんな即座に理解をされてもなんだか腹立たしい。

「野球部今から練習?」
「いや、今休憩中」
「へ、休憩?」
「練習5時過ぎからやってるから」
「ご…!」

それはまだ夜だよ野球部のみなさん。引きつった顔で泉を凝視していると、彼も引きつった顔でなんつー顔してんだ、と呟いた。

「うわー頑張ってんだね、みんな」
「頑張ってるな」
「わたし今初めて泉を尊敬したよ」
「おー、敬え、崇めろ」
「ミクロほどだけどね」
「ちっせーな」

じゃあお前も頑張れよー、と言って遠ざかっていく泉の後ろ姿をぼんやりと眺めた。少し汚れた練習着がやけにまぶしくて、なんだか気分がよくてわたしはひとりで笑った。もちろん、誰も見ていないけど。



補習が終わったら、アイスでも食べにいこうかな!

<070604>
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -