朝練が終わって、みんなより一足早く教室に向かう途中、階段をふらふらと上がっていく後ろ姿を見つけた。多分友達と呼ばれる間柄だから(クラスメイト、との差がいまいちよくわからない)素通りするのもなんなので声をかける。

「おはよ」
「ん?ああ泉、おは ブフッ」

俺 は、普通に、いつも通りに、挨拶をしただけだ。なんでこいつが吹き出したのかは謎だけど、取り敢えず腹が立ったので頭を叩いておいた。「痛い!」と抗議の 声が上がったけど、俺の顔を見るや否や再び吹き出す。女相手にいけないとは分かっていても、自然と右手がグーに。拳を顔の高さまで上げると、さすがに慌てた名字は弁解をし始めた。

「いやー、昨日の放課後よっちゃんの家行ったんだけどさ」
「よっちゃん?」
「同じクラスの、川口、」
「あーはいはい」

名字を言われて顔が浮かんだ。たしか同じ中学だった。だけどそいつの家に行った事とこいつの見事なまでに腹立たしい吹き出しにどういう関係があるんだか。しかし名字の次の言葉で、俺の疑問は綺麗に解けることになる。

「そんで中学のときの話になって卒業アルバム見してもらったのね」
「………へえ、それで?」
「うん、まあ…その」
「おれ確か川口の隣のクラスだったと思うんだけど」
「そっそうなんだ、」
「3組だったんだけど、見た?」
「えっまあ、 ふっ ぶふっ」

案の定笑い出した名字にヘッドロックを容赦なくお見舞いする。やっぱりそういうことか。坊主の何が悪い。球児の鏡だ。

「ごめんごめんすみません!」
「ほんとに反省してんの」
「してる!すっごいしてる!」

堪忍してやるか、と腕の力を緩めたその時だった。後ろから走ってきた田島が馬鹿でかい声で「おっはよー!」と叫びながら名字の頭をぐい、と押した。中途半端な体勢を立て直そうとしていた名字はバランスを崩し、つんのめってこけたのだった。



ざまあみろ!グッジョブ田島!

<070501>
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