木曜日、2時間目、の休み時間。おれがいつも通りに浜田から借りた(というか強奪した) ジャンプを読んでいると、後ろの席の名字が女らしからぬ「げっ」という声を発した。これは構ってやるべきなのか、だけどおれはジャンプが読みたい、ジャ ガーさんが読みたい。無視を決意する。


「…無視ですか、泉くん無視ですか」
「(駄目か…)んだよ、どうしたの」
「これを見てごらん、これを」

促されて指さされたところを見ると、よくある雑誌の占いページ。十二星座のひとつを彼女は指している。

「それがなに」
「よく見てごらんよ泉くん、今日はアンラッキーデイですよわたし」

泉くん、と白々しく呼ばれることに多少寒気を感じながらよく見ると、そこにはたしかに今日の日付が示されていた。いや、たしかに今日の日付だけど、

「それがどうした」
「それがって…泉つめたい」
「たかが占いじゃん」
「いやそうだけどさ、当日に見つけると…こう」

テンション下がるんですけど。小さく呟きながら示された今日の日付をがりがりと爪の先で引っ掻いている。どう返すのが正解かが分からずに、おれも適当にふーん、と呟く。

「泉は何座?」
「ん、おれ?射手座だけど」

答えると、名字の目線はきょろきょろと誌上を彷徨ったあと、ある一点でぴたりと止まった。おれの目線も自然とそちらに。射手座、ラッキーデイ、そこには、今日の日付。

「………」
「名字、ジャンプ貸してやるよ、浜田のだけど」
「……」
「ジャガーさん読めよ、おもろいから」
「…」
「ほら、笑う角には福が来るって、」

なんでおれ、こんな申し訳ない気分になってるんだろう、とか物凄く疑問に思いながら、だけどやっぱりなんだか申し訳ない気がして、うなだれた頭を少しだけ撫でた。



「もしや今週ワンピースないの」
「ああ、うん」
「やっぱアンラッキーだわ…」
「………」

<070322>
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テーマ「人外ファンタジー」
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