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 青春の謳歌について



※朝風呂にワコが現れた後の二人


朝風呂という贅沢時間の中でタクトは考えていた。
学校へ行き勉強をして、休み時間にはスガタやワコ達と他愛もない会話をして、また授業を受けて、お昼にはワタナベさんのお弁当に毎回驚かされたりして、学校が終わったら寮へ戻る。
頻繁に綺羅星が現れる訳でもないから、普通の日常の時自分は、青春を謳歌しているのだろうか、と。

「タクト、タクト!」
「え、あ! なに? スガタ。」

二回ほど呼ばれてからタクトは呼ばれているのに気付き、顔をスガタの方に向け挨拶を返した。

「眉間に皺寄せてたから、我慢してるのかと思ったんだが……のぼせたりしたんじゃないか?」
「ああ、ごめん。考え事してたから……だから皺寄ってたんだと思う。」

眉間に両手をあて、あははと笑うタクトにスガタは幾分安心した。それと共にその考え事についても幾分か気になった。

「考え事って?」
「そんな大したことじゃないし……。」
「気になる。」
「う、そんなこと気にならないでいいよ!」
「教えられないのか? こないだタクトは僕の事聞いてきたじゃないか。」

そう、ナイフを常に持ち歩いていた事とか、その後もタクトはスガタに色々質問をしていたらしい。

それを思いだしタクトは言わなければならない空気に唾を飲み込んだ。

「いや、その〜……僕は青春を謳歌しているのかな、て。」

タクトは顔を俯かせ、眉間に置いていた手を頭に持ってきた。あは、とまた笑うが少し大人しい。

「青春の謳歌ね……。」

スガタはそれを聞いて「難しいな。」と言い浴槽の縁に身体を預ける。

「僕結構真剣なんだけどー?」
「分かってるよ、タクトはいつも真剣じゃないか。」
「え! う、うん……何かありがとう。」

突拍子もなく褒められタクトは嬉しくなった、スガタが自分を認めてくれた気がして、そしてそれにまた顔に嬉しいですと貼り付けられたような表情をするからスガタは何だか心がむず痒くなるような気持ちになった。

「えへ、えへへ。」
「タクト。」
「何?」
「お前、可愛いな。」



「!? すすす、スガタ!?」

思い付いたらポロっと喋ってしまうスガタの性格はここで発揮された。
そして先ほどワコが一緒に入ると言った時くらいタクトは驚いた。

「え! ちょ、どう……ぬぁあ!?」

ずる、ばっしゃーん!
立ち上がり混乱していたタクトはのぼせからか目眩でスッ転んだ、それはもう綺麗に。

「ぷ、くくっ、あはははっ! タクトっ、本当そういうところが気に入ったよ。」

タクトは髪から水を滴らせ、鼻に入った水に痛さを感じながらもスガタの笑顔に、どきりとした。

青春の謳歌、この高鳴りが偽物じゃなければ、本当は今タクトは青春を謳歌しているのだろう。

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スガタに可愛いって言わせたい柳です。

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