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 泣く愛児



※11話の後の妄想、乙女タクト


「もう力は使わないで。」

どん、とスガタの胸を叩き顔を埋める。少女漫画の乙女な訳ではない、ただただ心配なだけであった。

「あれは、王の柱なの?」

この前の綺羅星との対戦で二対一という不利な状況にタクトが立たされた時にスガタが与えた力、それがタクトにはアプリボワゼなのか、それとも他の何かなのか分からなかった、だがどちらであってもスガタに何らかの影響が有ってもおかしくはない。

「だって二対一は卑怯だろ? 僕の力を少しばかりタクトに渡しただけさ。」

顔を埋めるタクトの頭を優しく撫でる、スガタは心配をしてくれるタクトが愛しいのだろう、目を細め優しい目で見つめた。

「でも、また……!」
「大丈夫、その時はまたタクトが僕を起こしてくれるんだろう?」

スガタはそっとタクトを身体から離すと涙やら鼻水なんやらでびしょ濡れな顔を両手で拭ってやる。

「それに、」
「それに?」



「僕はまだタクトの傍にいたいから。」

まだ眠れないよ、と言って目線を合わせ微笑むスガタにタクトはまた一段とスガタの事を好きになっていた。

そしてゆっくりと近付く顔に目を閉じて応える、ぬる、とした感触を感じた直後、角度は変わりまた唇は深くなっていく。

「っはぁ……。」
「まだタクトの事、知りたいな。」

前髪を掻き分け眉間に口付けるスガタ、それにタクトは自分達が淡い恋人であることを知った。
お互いを知って、強くなって、同性という不利な恋愛にもぶつかり合いながらも二人で今の幸せを感じていた。

だからこそスガタには無理をして欲しく無かった。

「すが、たぁっう、うわぁああんっ……!」

静かに泣くという理性が切れた、タクトは子供のように泣きながらスガタに好きだと、大好きだと告げた。

「よしよし、僕も悪かった。これからは気を付ける、でも僕はタクトが大事だから……危なくなったら手を出させてもらうよ?」



そしてもう一度スガタはタクトにキスをした。

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