自室の電話が騒ぎだした。
今日は日曜日、部屋でのんびりと昼寝をしていた時だったためか漫画のようにびくりと飛び起きてしまった。
折角のお昼寝タイムなのに、と思いながらも煩い電話の受話器を持ち上げた。
「もしもし?」
「すがっ、あわ……!」
その声の主はスガタであった。僕は何故か焦り意味もなく受話器を左耳から右耳へ移した。
「声掠れてる、寝てただろ?」
「うー、寝てました。」
やっぱり、と受話器の先から少し笑い声が聞こえてきた。用事は何なのだろうか、スガタが電話してくるなんて滅多に無いことだから嫌な予感がした。
「どうしたの? もしかして綺羅星関連?」
少し落ち着いた態度で覗きこむように声を出す。するとまたスガタは笑って、僕はとても不思議の感に頭が捩れた。
「ちがうよ、だったら直ぐに要件だけ言うだろ? タクトは心配性だな。」
ふふっ、と電話越しの声に僕の早とちりを自覚させられ顔が熱くなる。
「だ、だってスガタ……滅多に電話してこないから、嫌なことかと思って。」
「あ、そうか、ごめんごめん。」
「で、何? 連絡網?」
「くくっ、僕ってそんな電話しかしない人だと思われてんの?」
あはは、と声をあげて笑うスガタに僕は必死に否定した、そうじゃなくて、ほら、えーと……その。
「いいよいいよ、僕って電話あんまりしないし、そう思うほうが普通だから。」
「な、なんかごめん。」
さっきは熱くなって、今度は申し訳無くて落ち込んで、ただの電話なのに感情が安定しない。
「で、電話した理由なんだけどさ。」
「うん。」
「デートしようよ。」
はい? 思わず声に出してしまった、とても状況整理をさせて欲しい。スガタが、僕と?
「わっとどぅーゆーみーん?」
「どういう意味か? そのままだよ、デートはデート。」
電話越しでも分かる、スガタが楽しそうな顔をしているって事、何だか遊ばれている気分だがそれよりもまた熱くなってきた自分に変な感じがする。
「ま、昼寝してるくらいだから暇なんだよな、とりあえず学校の前で待ち合わせ……ランチでも奢るよ。」
「……っっ! イッツアラーンチ!」
その言葉には脳が反応した、色気より食い気とはこの事だろう。デートと言う単語をちゃっかり忘れ僕は海辺のあそこのランチがいい!と連呼した。
「うん、うん……今から行く、五分で支度する!」
スガタに急ぐことを伝えじゃあ後で、と言って切ろうとした時。
「忘れないで、これはデートだからな、タクト。」
と、最後にスガタが一言言って電話が切れた。
また顔が熱くなってきた、何故なんだか自分でもわからない。相手はスガタなのに、こんなにも感情が左右されるなんて。
僕は震える手で受話器を下ろす、頭のなかではスガタの声で゛デート゛という単語が繰り返し繰り返し流れていた。
「な、なんなんだよォ……。」
整理がつかないままだが五分後にはタクトは部屋を出た。
この後に待ち受ける甘い青春なんて知らずに。
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