それも愛故
※ヤンデレ(っぽい)注意※
「ただい、」
「なぁ」
へとへとになって帰宅した私を迎えてくれたのは、何かにご立腹な様子の恋人だった。ドアを開けた瞬間、威圧感たっぷりに立つギルがいたのだ。
しかも相当怒ってるみたいで、これはなかなか許してくれそうにない。
…いやいや、何を怒られるというのだ、私は何もしていない。むしろプリン食べられたり携帯チェックされたり、怒りたいのは私の方。
「何?…ただいま、ギル」
「さっきの、誰だよ?」
「さっきの?」
お帰りもないのか。少しむっとする。なんなんだ、本当。
心当たりはあるけど、流石に腹が立った。
「…わかんない、さっきのって?」
首を傾げて見せる。このくらいのいたずらなら大丈夫だろうと思ってのこと。
「しらばっくれんのかよ」
なんだよ、私のプリン食べたとき知らないふりしたくせに。
「だから、知らなーーっ、!?」
どん、と肩を押され、ドアに背中がぶつかった。顔の両側に手をつかれ、私は閉じ込められた状態になる。
なんか、やばい気がする。
残念過ぎることにこのドアはこちら側に引いて開けるドアだから、私が寄りかかっているままでは開けられない。
けれど開けるために隙間を作るなんて今はできそうもない。
「ギル、ごめん、嘘だよ。あれはただのフランシスで、送ってもらっただけだから」
「は?なんで、」
「今日ちょっと仕事残っちゃって、だからフランシスが手伝ってくれたの。それだけだよ、嘘吐いてごめん」
ね、と少しだけ笑って見せる。
いつもならこれで解決するのに、今日は違った。
ギルが笑わない。
「…ギル…?」
「なんで、そういう…!」
「だから、あれはただのフランシスだってば!わかるでしょ、なんでも、ないって…!」
「そうじゃねえよ!」
じゃあなんだよ、とギルを睨む。
もしかして私、信用されてないの?なんなの?
「そうじゃなくて、名前が他のやつと仲良さげにしてんのが気に入らねえんだよ」
「…そんなの、」
「俺はこんなに愛してて、なのに名前は他のやつと一緒にいる…なんだよそれ」
なんなんだよ、と呟いてギルが拳を握ったのがわかった。
「…もしかして、心配だった?」
「っ、」
「私が離れていかないか心配だった?」
仕方ないやつだ、と苦笑する。
ギルはしばらく黙って、そうかもしれない、と答えた。
私はするりとギルの頬に手を滑らせた。
赤い瞳を覗き込む。
「離れてなんか行かないよ、当たり前でしょ」
「…あ、ったり前、だろ。名前は俺のもんだしなっ…」
「…はいはい、ずっと一緒だから」
依存度は両者高め。
それも愛故。
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