イタリアのとあるリゾート地を歩く三人の男女の周りには黄色い声が絶えず飛び交っていた。一人の着飾った可憐な少女を取り巻くように、二人の容姿の良く似た端整な顔立ちの男性がいたからだ。

「ラナ、ジェラート買うー?」
「ううん、大丈夫だよフェリ兄ちゃん!」
「おら、お前等とっとと歩け。」

 はあい、間延びした声をロヴィーノに返した。前を歩く彼の手にある紙袋の中身は全て彼の妹、ラナの服である。本人は余り買わないが、それをよく思わない二人が何処かに出かけるたびにせっせと買い集めているそれらは、彼らの愛と同じぐらいにずっしりとしていた。

「ロヴィ兄ちゃん厳しい! 歩くの早いー!」
「うるせー、馬鹿弟と馬鹿妹の面倒みせられてるこっちの気持ちにもなれ。」

 自分が勝手に荷物持ちをしているとはいえ、その後ろで大切な妹が弟とはいえ男といちゃいちゃとしていればイラつくのも当然のことだった。久し振りの三人での外出で天候にも恵まれたというのに、本当は言いたくも無い事をすらすらと流し出す己の口が少し嫌になった。その時、不意に後ろで何かが倒れる音がした。植木でも倒れたか? いや一番倒れそうなやつがいるじゃねーか! はっとした時には既に遅かった。少し後ろから嗚咽混じりの声が響いていた。

「う……えぐ……うぅわああん、ろ、ロヴィにいちゃんのばかぁ……。」
「大丈夫!? 兄ちゃんラナがー!」
「ば、ばっきゃろー! お前が泣くんじゃねーよっ」
「うええんフェリ兄ちゃあん!」

 がばりともう一人のラナの兄であるフェリシアーノに抱きつく、でれでれと嬉しそうな顔をしつつも心配する声を掛けるフェリシアーノを見て、ロヴィーノは役得だなこのやろーと心の中で呟いた。そんな弟が、ちらりとこちらを向いた。ぷくと頬袋を膨らませている姿は怒っていることをひしひしと伝えてきた。よく見れば、口で何かを言っている。その形を読み取れば”仲直りして”と書いてある事に気づく。ロヴィーノはそっと視線をそらし、頬を指で掻いた。

「ラナ、ご、ごめん。兄ちゃんが悪かった! だから……!」
「むー……許さないもん。」
「じゃあ、どうしたら兄ちゃん許してくれるの?」
「……。」

 スッ、差し出されたのは小さな手だった。

「手にぎってくれたら許す……!」

 妹のその姿に、彼は頬を綻ばせつつもその手を取った。
 兄弟たちは仲よく手を繋いで、その場を去っていった。

Amore!

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