「何もかも見えなくて、お前ひとりしか見えなくて……少しでも、お前が居ないと不安で。」
すがるような声だった。プロテスタントの彼は、まるでキリシタンのように聖母マリアにでも私を重ねるように声を震わせる。
彼は体に回した腕を更に強くした。骨がきしむようだった。痛みを訴えても、更に強まるだけということは分かりきっている事で、痛みを訴える体に鞭打って彼を抱きしめ返した。
「でもよ、そういう状態って、裏返せば幸せってことなんじゃないのか?」
目を合わす。熱を持ったそれを絡めるようにするのは、逃げられないという暗示なのだろう。どちらともなく口を合わせると、熱い吐息と共に銀色のみだらな液体が端から漏れた。ギルベルトは唇をねっとりと舐めとった。
「ラナ、幸せだぜ。」
「ギルベルト、私も幸せだよ。」
私も同じように貴方が必要で、貴方がいないと不安で不安でたまらないんだ。凄いよね、私たち求め合ってる。これが相思相愛ってやつなのかしら。
ねえ、ギルベルト。
この不安に押しつぶされるよりも前に、早く貴方の愛で圧死したい。
「死ぬ時は誘ってね」