あたしかおるのおよめさんになる!

「ちょ、菊さん無言で刀抜こうとしないで!」
「……止めないでくださいラナ、彼奴は私の手で葬り去ってくれる。」
「大人気ない事はやめなさい! それに今、香君は香港!」
「ちちうえー?」

 いったい何時 私の娘に手を出したんです……。ひしひしと滲み出る殺気、その恐ろしい程の殺気を見事に最愛の娘と妻だけを避けて出しているのはやはり愛のなせる業か。それだけ娘馬鹿な父にさせたのは私だけど、ラナは娘を抱えながら思った。
 事の発端は簡単な事だ、ただラナが娘に誰のお嫁さんになりたいかと問うただけなのだから。心の端で「ちちうえのおよめさんになる!」と言われたらどう反応するべきかと考えていた菊だったが、冒頭の言葉ですっかり心は怒りと嫉妬の波で大荒れだった、本当大人気ない。

「やはり今の内に切り捨てて・・・!!」
「父上!」

 愛娘が呼び止める声にピタリと菊は動きを止める、何だか可笑しい! でも笑ったら絶対後でお仕置きされるよね! 過去にも経験があるラナは学習していた。それを余計な事を言わないようにする事にも使えばいいのに。娘の頭にぽんと優しく手を置き「なんですか?」と問いかける菊の笑みは柔らかかった。デレデレだよ、娘なのに嫉妬しちゃう、大人気ない。ここにも大人気ない大人を発見。

「あたしのいちばんしゅきな人は父上と母上だよ。」

 微かに漆黒の瞳が見開かれたのが分かった。
 この人凄い喜んでる!
 もし菊がポチ君だったら尻尾を盛大に振り回している姿が容易に頭に浮かんだ。かわいい。

「でもかおるはその次にしゅき!」

 一言多いところ、やっぱり私の子だ! 愛しい娘にほお擦りする。少し目を離しただけで何時の間にか何処かへ消えた夫。逃げて香君、超逃げて。鬼の形相した人がそっちに向かってるよ! 夫に追跡されているであろう哀れな香君の無事を祈った。

父上!

(あ、本田さんチィースッ。うちにvisitなんて珍しい的な)
(死んでください香君)
(何でサムライソード向ける的な!?)

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