待ち時間


 
 「やぁお嬢さん、元気かな」
 「うわぁ」
 「なんだ、その不味い物でも食べたような表情は」
 「渚ならいないわよー。まだお出掛けから帰ってきてないんだから。私も待ってるんだけどなかなか帰って来なくて困ってるの」
 「そうか。じゃあしばらく待たせてもらおう。それと困ってるっていうならもっと困ってるような顔をしておけ、口角が上がってるぞ」
 「うふふ。飲み物なんか飲む?」
 「あぁ」
 「はい」
 「すまない。……ふ、丁度好きな味だ」
 「ほんっとにあんたたちって好みが一緒なのねぇ。渚がよく飲んでるやつよ、それ」
 「ただいまー!って、あれ?渚まだいないのか?」
 「ちょっと煉、そこ二階窓よ」
 「オレにとってはここが玄関だ!細かいことは気にすんな!」
 「はい、煉のぶんの飲み物。この間おいしいって言ってたアレはもう作り置きがないから今度までに作っておくわね」
 「おう!ありがとな!」
 「というか……なんでお前が渚の家を把握しているんだ。むしろなんで誰よりも先に渚の家に居るんだ」
 「秘密」
 「こいつ、鍵がなくても勝手に開けんだよ」
 「煉、バラさないで!鍵を付け替えられたらまた苦労するんだから!」
 「ほぅ、ピッキングとはやるじゃないか」
 「……ピッキングが何ですって?」
 「ななななな、渚っ!?」
 「遅いぞ、渚」
 「渚おせーよ!」
 「さて皆さんに質問です。何故私の留守中に家に兄さんが居るのでしょうか」
 「さぁ」
 「何故私の留守中に二階窓が開いているのでしょうか」
 「さぁな」
 「何故私の留守中にお茶とお菓子が大量に減っているのでしょうか」
 「さ、さぁね……」
 「はぁ」
 「とりあえずこれでも飲んで落ち着けって!」
 「ありがとうございます、って、ここは私の家のはず……!」




 2015.06.12

 椛の名前が一回も出ないまま話が終わってしまった……。
 初めて会話形式の書き方にしたけどやっぱり難しいですね。



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