犯罪なんてかゆくない#御沢


今日こそその余裕ぶっこいた顔を歪めさせてやる。
今に見とけこのいじわる女房!

御幸の部屋の窓をノックせずに堂々と入る沢村は、すかさず御幸の目の前で腰に手を当て低めの声音で呟く。
「おい御幸一也。お前に聞きたいことがある」
「おう…どうした?」
まるでなにも知らないとでも言いそうな御幸の顔。
しらなんか切ってやがるが犯人なんてとっくにわかってんだよ!
喉まででかかった叫びを抑えて沢村はゆっくり話す。
「今からものすごく大事な話をするからな」
「おう…で?」
表情はなにも変わらず。大事なことなのでもちろん、
「いいか?!俺は今からものすごく」
「わかったって!!」
はいはいわかりましたとでも言うかのように沢村を止める。
とりあえずと、ベッドの横に沢村を座らせる。
深呼吸をいちどした沢村は、険しい顔で話しはじめた。
「2週間前、おれのシャーペンが無くなった。」
「おう」
「1週間前、おれのシャツが無くなった」
「…おう」
徐々に御幸の顔に余裕が無くなる。
その顔を確認して、ざまあ、と心中で呟きながら続ける。
「そして5日前々、おれの一枚目のパンツが無くなった」
ちら、と御幸は目をそらす。
(あー…赤いチェックだったっけなあ)
「4日前、二枚目が無くなった」
御幸は目を閉じる。
「お、おう…(灰色のあれか)」
すると沢村は立ち上がり持参の紙袋を取り出すと、どんと御幸に押し付ける。
「そんで3日前…封筒がおれの机の上にあった。中身は…」
袋からがさごそとものを取り出す。
まごうことなき透明なそれは避妊具だった。
「…」
もはや返答もできなくなり黙りこくった御幸は顔ごと沢村から反らす。
(あれはやりすぎたなあ…)
「そのシャツおれのだよな?あとそのシャーペン。透明な袋の中の。…あとそのパンツ。丸のなかに栄って書いてあるその二枚。」
「…えへ。だって御幸くん健全な男子高校生だから?」
はっはっはともう開き直る御幸。
はっはっは。じゃねーよ!!
「それを犯罪って言うんだ!!てめさっさと返せ!!」
「お前…パンツ俺の精液だらけだけどいいのか?それともくれんの?今履いてるドット柄」
さらりととんでもないことを呟く。
「っざけんな!何で知ってんだよ!」
「お前のことなら何でもわかるぜ!」
男子のパンツで自慰するやつのどこが健全だと言うのか。
心のなかの何かがすこしずつ崩れてゆくのを感じながらも必死に抵抗する。
「あーもー話になんねえええ!」
「まあ、とりあえず落ち着こうぜ旦那さんよ!」
すっ、と沢村の身体に近づく。
「やめろ!来るな!俺の身体に触んな!」
「なに言ってんだよスキンシップができなきゃいいバッテリーなんかなれねえぞ?」
沢村の太ももに手を添える。
「目が本気なんだよ!!」
沢村はぞわぞわする。
ヤバい。
勘がぴんと働く。
「…よしっ!じゃあ沢村、今から俺達がいいバッテリーになれるようにせっく…いやいやスキンシップしようぜ!」
「なんかとんでもない言葉聞こえましたけど?!ってかお前がしたいだけじゃねえかって、う、わっ?!」
すかさず御幸は沢村の頬を撫でシャツのなかへ手を滑らせる。
「ははっ、顔近ぇ。ちゅー」
「うわううああマジでやめろ!はなせ、やめっ…やめろおおお!!!」
winner,御幸。



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