ペロリ/レイマリ | ナノ

「あああ」
「どしたの?」
「あれよ、せーりだよせーり」

魔理沙はちゃぶ台に突っ伏してうなだれている。霊夢は構わずに煎餅を口の中へ放り込んだ。ばりぼりと煎餅が砕かれる間抜けな音が、事の深刻さを軽くさせているようだった。

「ふうん。キツいんだ」
「すっげー腹いてえ」

普段、人の家の壁さえ破壊するくらい元気の有り余っている魔理沙が、まるで干からびたミミズのようにぐったりしているのは珍しい。魔理沙が呻きながら下腹部をさするのを、霊夢はじいっと見ていた。

「わたしはいつも軽いしその痛みはわかんないわ」
「うぜえ。そしてうらやましい」
「じゃあ弾幕勝負しよっか!」
「くそっ!だまれ!」
「冗談よ。ただでさえわたしは幻想郷一強いのに、弱った魔理沙を倒したところでなにも楽しくないもの」
「うぜえいつかぶったお…っ」

腹痛の波によって魔理沙の言葉は遮られた。両腕で腹部を抱えて丸くなり、息が詰まるほどに痛いらしい。霊夢は皮肉るのをやめ、ようやく魔理沙のことを心配し始めたらしく、彼女の顔をそっと覗いた。

「ううぅ…いたい…」
「紫呼ぶ?それとも永林のとこ行く?」
「まず、紫はない。それに動けないし…」

魔理沙の声は引きつっているようだったが、話せないほど辛いわけではないようだ。霊夢は安堵して息をついた。

「そ、まあ横になってなさいよ。なにか温かいもの作ってきてあげるから」
「霊夢が、優しい、だと、」
「ほほほわたしの看病は高くつくけどね」
一言ずつ息継ぎしながら言うあたり、魔理沙は驚きを隠せなかったようだ。そんな彼女を牽制するように、霊夢は但し書きを付け足す。驚嘆の表情は一変し、魔理沙はきりりと歯を食いしばった。

「くっ…なにが目当てだっ!」
「そうね、」

薄く開いた唇からはみ出した舌が、魔理沙の喉元に迫っていた。








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