「今年の冬は暖かいわね」
「…どこがよ」
障子の向こうだってきっと真っ白だわ。そりゃあ炬燵に入っているから今は暖かいけれど、去年、今年の冬は異常気象で過去最低気温を更新しているのだとか。
「紫、(頭おかしくなってるから)早く冬眠しちゃったほうがいいんじゃない?」
「あら、どうして?あなたも暖かいとは思わない?」
「思わないわね」
「こんな冬は久しぶりよ。誰かと一緒にいたくて、冬眠する時間が惜しいなんて」
身を乗り出した紫が、わたしの頬を撫でた。脈打つ心臓が煩い。『続きはCMの後で』なんて決まり文句がテレビから聞こえた。紫は何を考えているのか読めない奴だけど、この予感は当たっている気がするの。
「あなたといるとね、春みたいに暖かいわ」