春いちばん/紫霊 | ナノ


「今年の冬は暖かいわね」
「…どこがよ」

障子の向こうだってきっと真っ白だわ。そりゃあ炬燵に入っているから今は暖かいけれど、去年、今年の冬は異常気象で過去最低気温を更新しているのだとか。

「紫、(頭おかしくなってるから)早く冬眠しちゃったほうがいいんじゃない?」
「あら、どうして?あなたも暖かいとは思わない?」
「思わないわね」
「こんな冬は久しぶりよ。誰かと一緒にいたくて、冬眠する時間が惜しいなんて」

身を乗り出した紫が、わたしの頬を撫でた。脈打つ心臓が煩い。『続きはCMの後で』なんて決まり文句がテレビから聞こえた。紫は何を考えているのか読めない奴だけど、この予感は当たっている気がするの。

「あなたといるとね、春みたいに暖かいわ」










110201










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