煙たい1/久不 | ナノ



FFIを終え、イナズマジャパンが帰国すると、空港にはたくさんのファンが出迎えていた。その中には彼らの家族もおり、我が子を見つけるや否や抱きしめたり、頑張ったねと頭を撫でたり、各々感動の再開を果たしている。しかし、不動はその輪に入ることなく、退屈だと言わんばかりにひとり、欠伸をした。
しばらくはその光景をぼうっと見ていたが、欠伸で溜まった涙が乾いたので、その場を素通りするつもりで足を踏み出す。背けたいものから遠ざかっていくはずだった。なのに、不意にもといた場所に引き戻される。不動の腕を掴んでいたのは監督の久遠だった。

「どこに行くつもりだ?」
「帰ンだよ」
「どこに?」
「…どこでもいいだろ」

不動はふいと顔を逸らし、強引に立ち去ろうと久遠の手を振り切ろうとしたが、彼は再度不動の腕を強く掴んだ。そこら中から聞こえる歓声と不釣り合いな舌打ちの音が、二人の間に響いた。

「私の家に泊まっていきなさい」
「は?何言ってんだよ」
「私には責任がある」

断言したものの、その責任というものに自信は無かった。家の無い選手を部屋に泊めるということは、監督が選手に負う責任に含まれるのだろうか。例えば施設に届け出をするなど、他に方法はあるのではないか。後からまっとうな考えが浮かんでくる。まさか、私情を挟んでいるとでもいうのだろうか。久遠は顔にこそ出さなかったものの、内心では不動と同じように自ら提案したはずのその発言に驚いていた。

「なんで」
「家の心配が無くなるまで、私の家にいなさい」

だが困っているということは事実で、不動が強がっていることは明らかである。その証拠に、久遠が威圧するように繰り返し言うと、不動は大人しく口を噤んだ。









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テーマ「人外ファンタジー」
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