(人のことは言えないけれど、)赤髪はよく目立つものだ。たとえ身長が低くても、周りにチームメイトが集まっていても、真っ先に俺の目に飛び込んでくるのは彼の姿だ。理由はそれだけじゃないけどね。
「よっしお前ら、今日の練習はここまでだ」
「はい!」
「バーン様お疲れ様です」
「お飲み物どうぞ!」
「……」
「…」
わらわらとプロミネンスの集団が宿舎に向かってばらけていく。やっと練習が終わったらしい。ただ、数人のチームメイトが未だにバーンの周りを取り囲んでいる。
確かに彼は、男子中学生らしく馬鹿で明るく、人を寄せ集める性格をしている。でも、俺はそれが気に食わないのだ。
「ねえ、」
「あ、グラン様!」
「ごめんね、バーンに用があるんだ」
「あ、はい!バーン様…」
確かヒート君が呼んでくれて、取り巻きの中からバーンが顔を出した。彼は目を大きくして、俺の前までぎこちない足取りで駆け寄ってきた。
「グ、グラン、何だよ?」
「練習終わったんでしょ?一緒にご飯食べに行かない?」
「え、でも…」
バーンはちらりとチームメイトの方を見やる。先に約束でもしていたのだろうか。俺もそちらににこりと笑顔を向けると、物わかりのよい彼らは、バーンに『行ってきなよ』と合図を送ってくれたようだ。
「嫌?」
「…しかたねーなっ!つ、ついてってやるよ」
そこですかさず問い直すと、バーンはあっさりと了承してくれた。俺から目を逸らすことといい、台詞の途切れ具合といい、少し赤くなったほっぺといい、馬鹿でわかりやすいなあ。
「ふふ、ありがと」
「ちょっ、グラン!」
現時点で一番好きなバーンが見れたから、気をよくして彼の手を握ってしまった。これじゃあまるでデートみたい。頬はさらに紅潮して、髪と同じくらいに赤くなったから、もしかしてバーンも俺と同じことを考えたのかも。
「それじゃあ、バーンはもらっていくから」
110210