日没/豪風 | ナノ



「女みたいだからか?」

遠くで沈みかけている夕日の頭をぼうっと見ていた豪炎寺は、意識を取り戻したみたいにまばたきをした。

「どういうことだ?」
「豪炎寺が俺と付き合いたいって思ったのって、俺が女顔だからなのかなと思ってさ。」

豪炎寺は俺の質問の意図を見破ろうとしているのだろうか、瞳孔を覗かれているような錯覚に陥る。けれど俺に大した考えがあるわけではない。もし豪炎寺が俺の女みたいなところを好きだったとしても、俺のことが好きだということには変わりないだろう。だから、問題じゃないんだ。これはただの好奇心で、豪炎寺に何を言われても関係ないって思えるはずなんだ。だから、今まで怖くて聞けなかったことを聞いてしまった。

「確かに、男にしては綺麗な顔をしているとは思う」
「うん」
「一目惚れだった」
「…そっか」

辺りと同調するような気分は、予想していなかったはずなのに既視感を孕んでいる。
豪炎寺が俺のことを好きなのに、まるで求めているのは別の誰かのような、好きなのは俺じゃないみたいな、そんな気がした。男が女を好きになるのは当然のことなのにな。
重力が増したようで、それに逆らってはうまく笑えずに俺はただ俯くばかりだった。

「ま、こう長い間一緒にいると、印象も変わるがな」
「え?」
「身体を張って人を守れるところとか、そのために強くありたいって思ってるところとか、男前だよ、お前」

鬱陶しくまとわりつく空気は軽くなったようだ。俯く顔を上げるとまた、見透かしているみたいに俺の瞳を見る豪炎寺がいた。

「もしお前が女みたいな性格だったら、それは俺の好きな風丸じゃないから」

思わず目を見開いてしまった。豪炎寺の前で女みたいに振る舞わなければと思っていた自分に気がついた。だから悲しくて、今までずっと聞くのが怖かったのか。得体の知れない何かから解き放たれたのに安堵したのか、目の奥がじんじんと疼き始めて、瞳に張った涙の膜が厚くなってきたようだ。

「だから、俺の理想を勝手に想像して演じるなんか、するなよ」

ぐすん、と鳴らした音と一緒に落ちた涙は、豪炎寺の制服に吸い込まれていった。肩にすがりついて泣く自分は相当格好悪いと思うけれど、豪炎寺が格好良すぎるのが悪い。今だけ、女々しい俺を許して。
夜風に冷やされた涙を俺のじゃない指が拭った。







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