ちゃんと好きだよ/赤緑 | ナノ

誕生日ねた!


11月22日、午前2時。今日はグリーンの誕生日だ。山中に籠もっていては日付を確認することすら困難だが、グリーンにもらったポケギアによってその心配は既に解消されている。ちなみに昨日久しぶりにディスプレイ画面を見て、時間の経つ早さに驚いたところだ。ごめん、 実はあんまり使ってないんだよなあ。そういうわけで昨日、グリーンの誕生日が翌日に迫っていることに気づいたおれは、大慌てで何をしようかと考え始めたのだ。
というわけで、おれは今トキワジムの裏口へ来ている。定休日ではないから、いつもと同じようにジムで寝泊まりをしているはずだ。おそらくもう寝ているんじゃないかなあ。預かっている合い鍵を使って中に入ると、案の定真っ暗だった。グリーンは机に突っ伏して寝ている。パソコン画面の明かりがそれを照らしていて、どうやら仕事の途中で寝てしまったみたいだ。すうすうと規則正しい寝息をたてて、それはもう気持ち良さそうに寝ている。安眠妨害なんてしたくないけれど、とりあえずグリーンを起こさなければ話が始まらない。

「はい、起きてー」

肩をできるだけ優しく揺すると、グリーンは小さく呻いて、焦点の合っていなさそうな目で俺を確認したらしい。

「おはー」
「ん…レッド…?」
「よっし行くか!」
「え?どこに?」
「すぐわかるよ」

未だ呆けているだろうグリーンの手を取って外へ駆け出した。ふらふらと覚束ない足取りのグリーンを、ジムの外で待たせていたリザードンに乗っけて、おれもその後ろに跨る。

「リザードン、飛んで」

ばさり、と羽根を上下させると同時に感じる浮遊感。しばらくすると風景は暗い空になっていた。グリーンはぼうっとして俺の胸にもたれかかっていたけれど、肌を滑る冷たい夜風のせいでだんだん目が覚めてきたらしい。ぱちんと瞬きをしてきょろきょろ辺りを見回したかと思えば、振り返っておれの肩につかみかかってきた。

「ちょっ、何してんのおまえ!?」

グリーンは目をまんまるくして驚いているみたいだ。あと、ちょっとだけ怒ってるかな。確かに仕事があるのに連れ出したのは悪いけれど、どうしても見せたいものがあるんだからしかたないじゃん。

「見ればわかるだろ、飛んでるんだよ」
「だからなんでだ!」
「まあまあ落ち着いて。ほら、見えてきた」

リザードンに向かわせた先は、おれの居候先であるシロガネ山の頂上だ。そこを指差すと、グリーンはまた目を見開いた後、眉を潜めてめんどうくさそうな顔をした。失礼なやつだなまったく。ようやくそこに降り立って、おれはリザードンをボールに戻した。

「なんで連れてきたんだよ。またジム戻んなきゃいけねーじゃん」
「ごめんごめん。でもいいもの見せてあげるから」

膨れっ面するグリーンを宥めて、とりあえずその場に座った。座るように促すと、グリーンも文句垂れながら横に座って、二人、隣同士になって三角座りした。地平線の真っ直ぐ先を見据えると、既に地上と空の境は黄緑色に滲んでいる。

「そろそろかなあ」
「うわ、」

瞬間、視界が白んで、光の筋がおれたちを照らした。空の淵からぽこりと現れた朝日の周りの空は橙黄色黄緑水色とグラデーションになって広がっている。毎日見ている朝焼けは、日ごと少しずつ違っていて、とりわけ今日のはきれいだ。

「グリーン、誕生日おめでとう」

その景色から目を逸らして、誰よりも早く言ってやろうと決めていた言葉をかけた。グリーンの瞳は朝陽を吸いこんでキラキラしている。

「バカじゃねーの…」

ぐすんと鼻を啜る音と、小さく「ありがとう」とつぶやいたのが聞こえた。







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