無自覚悪女/円風 | ナノ

俺の背にのしかかるようにしてくっついている円堂のせいで、そろそろ重くて暑くて眼下の英文字に集中できなくなってきた。俺は大概円堂に甘いと思うし、こんなふうに抱きしめてくるのは好かれてるって証拠だろうし嬉しいんだけれど、時にはメリハリとかそういうのも必要なんだと思う。多分。

「なあ、円堂」
「ん?なにー」
「重いんだけど…」
「気のせい気のせい」

結構頑張って言ったのに。あっさり流された挙げ句、肩を抱く腕に力を入れられて、さらに密着する結果となった。もし今振り向いたらきっとキスできちゃうくらいに円堂の顔がそばにあるんだろうな、なんて思ったら、どきどきどきどきしてきてもはや英文読むどころじゃない。ちがう、だめだ、俺がしっかりしなければ。

「俺、宿題、やってるからさ」
「ああ、やってていいぜ」

清々しく返答する円堂に、いい加減察してくれよ、と内心で唱えたところで通じるわけもない。時々恐ろしく鋭いが、反面鈍感であることも多い円堂だ。はっきり言葉にしなければ通じないのだろう。

「円堂、集中できないんだって」
「え、なんで?」
「くっつかれたら落ち着かないだろ!」
「あ、なるほど」

間違えた、と思った。だって見ていないけどわかる。俺のすぐ後ろでにやにやと笑っている円堂が容易に想像できる。英語の宿題が終わる気がしない。

「風丸、どきどきしてんだろ?」

身を乗り出して顔を覗き込まれる。目を細めて微笑を浮かべる円堂の表情は本当に反則だ。どきどきしないわけないじゃないか。今までもどきどきしてたけど。

「し、してない。もう離せってば」
「やーだ」
「ちょっ、えんどっ」

円堂に身体を預けるようにして倒された。丁度胸のあたりに俺の顔が埋まって、見上げたときの円堂の表情のなんと悪いこと。これでは蛇に睨まれた蛙だ。睨まれて逃げられないのをいいことに服の裾をめくり始めた円堂に対抗する術はもうない。だって俺、カエルだし。

意識がとけてきたころにふと思った。俺は最初からこうなりたかったんじゃないかって。






101107








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