「あ、お米ついてる」
「へ…」
グリーンの頬に手を伸ばして、ついていた米粒を指でとって口に運んだ(ように見せかけてみただけで実際米粒なんてついてなかったけど)。するとグリーンは凍り漬けになったみたいに瞬きさえもしなくなったけれど、すぐに顔を赤くしてはくはくと口を開けた。
「お、お前よく、んなことできるよなっ」
「何言ってんのグリーン、誰もいないのに」
「そういうことじゃなくてだな!」
周りは岩だし、外は真っ白で寒いし。誰も、俺たち以外いないのに、そんなシロガネ山でですらグリーンは人目を気にするみたいに恥ずかしがる。からかうにはおもしろいしかわいいけれど、キスするのでさえ苦労するのであれば問題だ。
「ていうか気にしすぎ」
「なんでお前が平気なんだかわかんねえ」
「んーそうかなあ」
「普通すぎだろ」
グリーンはそう言いながら瞼を伏せた。俯き嘆息した彼をそんなに長くはない腕で、年齢にしては多分薄い胸で抱きしめた。
「ちょっ、レッド…」
「多分俺は顔に出ないだけなんだよ」
もごもごともがくグリーンをぎゅうと抱いて、耳元で話し始めるとだんだんとグリーンはおとなしくなってきた。
「あ、ドキドキしてる」
「そりゃーそうでしょ。好きなこ抱きしめてドキドキしないやつなんていないよ」
そう言うとグリーンはおそらく真っ赤になった顔を隠すために俺の肩口に顔をうずめた。かわいいな。
「だから自分ばっかりだなんて思わないで」