イッショニイタイ症候群/1048 | ナノ

「十代はなせえええ!」
「やだねー!」

十代はヨハンの腰に腕を回して全体重をかけてしがみついていた。その重みでヨハンは立つことができないでいて、それでも四つ這いになってまで前に進もうと試みる。途中ちらりと掛け時計に目をやるとあからさまに顔を顰めて十代を睨んだ。

「まじで時間ないじゃん!じゅうだい!」
「えー授業なんて出なくていいじゃんか」
「自分が出たくないからって巻き添えにすんなばか!」

うおお…と唸り声をあげながら、ヨハンは一歩一歩着実にドアの方へ進み始めていた。十代のこめかみから一筋の汗が伝う。しかたないと唇だけ動かして下唇を噛むと、ヨハンの両足首を勢いよく引っ張った。四つ這いの状態で両手だけで身体を支えられるわけがなく、ヨハンはバランスを失って勢いよくこけた。顎を打ち付ける鈍い音と、べちんと腕が床についた音が響く。そこまでするつもりは無かったけれど、ヨハンが出ていくのを阻止できたのだからいいか、と十代は悪びれる様子もなく、呻くうつ伏せに倒れたヨハンをひっくり返した。

「もうほんと勘弁してくれよ…」

十代はヨハンの上に股がっていて、押し倒しているようにも見える体勢だった。その状況下で、ヨハンは十代を涙目で見て泣きそうな声を漏らしたのだ。う、と息が詰まり、回路がショートしたように十代は動きを止めた。

「十代?」

小首を傾げるヨハンを見て完全に断線したらしい。十代は顔の両側に肘をついて、ヨハンの眼前で子どもみたいな笑顔でにこりと笑ってみせた。

「ごめん!ヨハン、したくなっちゃった」
「…え?」

首筋から後頭部を持ち上げるように掴んで十代はヨハンの唇に自分の唇を押し付けた。状況を把握できていなかったヨハンは、気付いた時にはもう遅く、啌内に入りこんだ舌を受け入れるしかなかった。







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