イッツ ミー/静帝 | ナノ

そんなにえろくないですが
一応ワンクッション!
ちょっと危ないです























今すぐに抱き締めたい背中が目の前にある。手を伸ばせばすぐに届くけれど、街中でしてはいけないことをしてしまいそうで、中途半端に突き出した手のひらが空を掴んだ。触れたい抱きしめたいキスしたいセックスしたいとか、暫く会っていないからか吐き出したいほどの欲が腹に溜まっていることを、彼の背中を見て思い出してしまった。今、帝人と向き合ってはいけないと自らに警告する。その手をおろして足を止め、すると帝人は歩いて歩いて俺から遠ざかっていく筈だった。だが、それなのに帝人は足を止めて振り返ってしまったのだ。ぱちぱちと瞬いて覗きたくなる瞳に捕まってはもう逃げられない。小走りで俺のそばまで来た帝人はにこにこ笑って名前を呼ぶ。久しぶりですね、なんて照れながら言う。

「寂し、かったんですよっ」

ベストの裾を浅く掴んでくい、と引かれる。切なそうに俯いて、遠慮がちに帝人の瞳は俺を見た。ただそれだけなのにどくどくと体内から響く脈の音が聞こえる。俺は帝人の手首を掴んで歩きだしていた。







「ふ、ぅッ…ぁ…ん…」

一人用のベッドでも小柄な帝人相手ならば十分足りる。ぴちゃりとわざと音を立てて舐めて甘噛みすると、帝人の腰がびくりと揺れた。指でつまんで転がして撫でて揉んでを不規則に繰り返していると、始めは堪えていた声が薄く開いた唇から漏れて、それが鼓膜を揺らす感覚は随分久しぶりだった。

「な…なに、にやけてるんですか!」
「そりゃあ帝人がかわいいから」
「も、恥ずかしい…」

帝人は真っ赤にした頬や潤んだ瞳を腕で隠そうとするが、その手首を掴んで阻止する。帝人は泣くのを堪えるときみたく唇にきゅうと力を入れて、なんで、と言いたげに俺を見た。

「しずおさんっ…」
「隠す必要ねえよ」
「だって、みっともない顔してるでしょう?」

溢れそうな涙は、生理的なものだけではないらしい。俺がどんなに想っているのか帝人は知らなくて、俺が嫌うとでも思っているのだろうか。手首を掴んでいた手を掌に移動させて、恋人繋ぎで握った。帝人は短く息を吐いた。

「俺はどんな帝人でも好きだから、お前がどう思おうが、おれは今みたいにやらしい顔した帝人だって見たいと思っちまうんだよな。嫌か?」
「しずおさん、ずるいです」

帝人は強ばっていた唇を緩めて、降参ですと呟いた。ぎゅう、と手を握り返してきた感触が嬉しくて、帝人の小さい唇を食べるみたいにキスをした。








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