ウェルカムトゥ/静帝 | ナノ

「みかどー!」
「ん?」

振り向くとベッドに胡座をかいた静雄さんが、手を振って手招きをしていた。それに従うようにベッドに乗っかって、静雄さんの前でぺたりと座る。

「なんですか?」
「捕まえた」
「わ、」

いきなり腕を広げた静雄さんはその長い腕で抱きつくように僕を捕らえた。ぎゅうぎゅうと引き寄せられて凭れかかるように身体が密着する。顔が静雄さんの胸のあたりに埋まってしまったから見えないけれど、ふふ、と笑う声が聞こえた。息が苦しくてその胸の中から逃げるように上を向くと、静雄さんはやっぱり笑っていて、その笑いかたが何時もとは違うことに気付く。快活なものではなく、後を引くその笑みを僕は今までに何度か見たことがあった。

「案外簡単だったな」
「何が、ですか…?」

抱き締められて温かいはずなのに、ヒヤリと背筋が冷えるのはなぜだろう。静雄さんが発する吐息混じりの声が、頭のなかにふわんふわんと響いている。

「帝人、人んちのベッドに誘われたらもっと警戒しねぇとなあ」
「え…」

静雄さんは人差し指と親指を僕の顎に添えて言うと、それをぐいと持ち上げられてキスされた。元から開いていた唇の隙間にすんなりと舌が入りこんで、動き回るそれに歯列をなぞられ上顎を擦られ、僕の舌に絡ませられる。ここまできたらもう何をされるかなんてわかりきっていて、逃げ遅れてしまったこともわかっていた。上手く息が吸えていないからかキスがきもちいいからか、頭がぼうっとしてどうでもよくなってきて、静雄さんが望むなら僕はもう抵抗しなくていいや。なんて熱のこもってきた身体に言い訳をする。
Tシャツの裾がめくられてそこが甘ったるい外気に触れたかと思えば、静雄さんの手が腰のあたりを撫でて、そのひんやりと冷たい感覚にびくり、と肩が跳ねてしまった。けれども、笑うこともからかうこともせず、静雄さんは僕から唇を離して言う。

「いいか…?」

するりと手が腹のほうに回ってきて、上へ上へと徐々に胸に近づいていく。静雄さんは僕が断る気の無いことがわかって聞いているのだ。

「静雄さん、意地悪です…」

俯いてみせれば、静雄さんはわりぃ、と呟いて僕の服から手を引きずり出した。その掌で僕の頭を撫でて、きっと困った顔をしているのだろう。
僕は見えないように小さく笑って、静雄さんに飛びつくように首に腕を回して抱きついた。それから息を止めた静雄さんの眼前で言うのだ。

「いいですよ、してください」







100330










「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -