あなたを虜にしてみせましょう/1048 | ナノ

※ちょっといかがわしいかも





















「いっ、」

しゅう、とカードの側面が人差し指の腹を滑り、そこからぴりりと響いた痛みにヨハンは目を細めた。急いでその指を見ると、2センチ弱ほどの長さの切り傷が現れ、ぷつりとビーズのような血の滴が滲み始めた。

「十代、ティッシュある?」
「どーしたんだ?」
「カードで切っちゃって」

ほら、と四つん這いで寄ってきた十代にその傷を見せる。十代は右手でその手を取ると、それを自分のほうへと近づけた。すう、と十代の呼吸する吐息がヨハンの手に緩くかかる。その微弱な触感が伝わると、少しずつ心音と心音の間隔は狭くなっていった。

「うーん、」
「、じゅーだい?」
「舐めときゃ治るんじゃね?」
「へ、うあっ、」

十代はその傷に舌先を這わせた。血の滴を掬いとるように器用に舌先を曲げて、次にその傷の向きに沿うように、まるで蛞蝓が地面を這うみたいな動きでゆっくりとそれをなぞる。

「…っぅ…もう、いいって…」

ヨハンは傷口をなぞられるたびに走る痛みに歯を喰い縛った。けれども感じるのは痛みだけではなくて、十代の舌に触れている部分が熱をもっていくことにヨハンは気付いていた。それに戸惑い、十代を静止させようとするが、彼の舌の動きは止まるどころかぱくりと口を開けて指全体を銜えこんでしまったのだ。ヨハンの手を逃がさないというように両手で握って、例えば棒つきキャンディを食べるみたいに、舌全体で包むようにそれを何度も何度も擦るように舐める。十代が時折唇の隙間からぴちゃりとこぼす音や、痛みに慣れてしまってずくりずくりと疼く傷口や、それとはまた別に現れた腹の辺りでもやもやと疼くものが、ヨハンの意識をぼんやりと霞ませた。

「じゅーだい、も…いいってばあ…」

ヨハンは十代の袖口をくしゃりと握ったが、腕には力が入っておらず、その手はいつずり落ちるかわからなかった。それでもすがるように袖口を握り直す姿を見て、十代は口角を吊り上げると、ちゅ、と音を漏らして漸くヨハンの指を解放した。

「痛かった?」
「っ、うん」
「あれ?なんか途中から痛くなさそうだったのになー」
「なっ!」

十代は口元を曲げて笑みを浮かべ、ぺろりと上唇を舐めた。その赤い舌に、ヨハンは指を這った痛いような擽ったいような疼くような、なまなましい感触を思い出して赤面する。
その唇がヨハンの耳許まで近づいて、指先が首筋を辿るようになぞった。
「ヨハン、他にも舐めてほしい?」
「えっ…ちょっ…ふぇッ…」

首筋、鎖骨を辿った指は服の上から胸、腹、臍を滑って降りていく。ヨハンの口から出るのは意味を持たない、言葉にならない声だけで、十代の指が服の裾をひらりと捲るのをどうしようもなく見ていることしかできなかった。







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