僕は臆病だから/赤緑 | ナノ

「は、また戻んの?」
「うん、」

2年ぶりにマサラに帰ってきたレッドは、またあの誰も来ない山の頂上へ戻ると言う。あそこには何もない。年中雪が降り積もっているだけだ。そこに何の魅力があるのだろうか。俺には理解できない。

「また戻ってどうすんだよ」
「待つんだよ、僕を彼処から引きずり下ろしてくれる奴をね」
「そんな奴いねーよ…」
「まあグリーンには無理かなー、はは」

レッドの感情の込もっていない笑い声は俺を馬鹿にしているように聞こえた。こいつはどこまでも俺の機嫌を損ねるのが上手い。それは昔からだったけれど。もやもやと胃の辺りを渦巻く気持ちを抑えていると、レッドは思い出したように手を打った。

「でね、今回マサラに戻ってきたのにはわけがあるんだ」
「は?」

てっきり気分で戻ってきたものと思っていたから、レッドに何か明白な目的があったことに驚いてしまった。その内容は気になるので、引き込まれるようにレッドの目を見ると、彼は口を開き始めた。

「こないだまでは食料とか揃えるために週一くらいで麓のポケモンセンターに降りてたんだけどね、トレーナーも来ないしお金儲けできないじゃない。だからお金無くてご飯食べれなくなっちゃってさあ…」
「はあ」
「つまり週一くらいで食料を届けに来てくれませんかっていう」
「それは俺に週一であの山に登れということか?」
「そうそう」

こくこくと頷いて、よろしくと言わんばかりに肩を叩かれた。あれ、俺まだうんとかやってやるよとか言ってない筈なのに。

「じゃあ俺がもし来なかったら、お前、餓死するよな」
「いやいや、グリーンは来るよ」

レッドは当然のようにそう言って踵を返すと、ボールからリザードンを出してその背にすとんと腰を下ろした。

「じゃあ期待してるよグリーンくん」
「レッド、待っ…!」
「また近いうちに会いましょー」

レッドが手をひらひらと降ると、上昇気流を捕まえたリザードンは高く飛んでいってしまった。言いたいことは何も言えないままにレッドは行ってしまったから、次の休みの日は1日潰してレッドに会いに行ってやろうと思った。仕方ないからついでに食料を持って。







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