掴むと簡単に親指と残りの4本がついてしまうぐらいに細い腕だった。そのまま肩とか背中とか腰とか、確かめるように触ると、どこもかしこもやっぱり細い。帝人がどうしたんですかとでも言いたげに戸惑っていたが、それを知りつつもなんとなく俺は帝人を触り続けていた。
「えーと、どうかしたんですか?」
思い浮かべたとおりに帝人が聞くので、俺はちょっと笑ってしまった。
「ちょっと、なんで笑うんですか!?」
「いやいや、なんでもねぇよ。それよりお前細すぎねーか?」
「そうですか?」
きょとん、と丸い瞳が俺を見た。
「ああ、もっと食べた方がいいな。抱き締めたら折れちまいそうだ」
あれ、何言ってんだ俺。抱き締めたらなんて、少年に言う言葉ではない。何故かぽろりと言葉を溢してしまったことを後悔していると、くい、とバーテン服の裾を引かれた。
「なんなら抱き締めてみてくださいよ、絶対に折れませんから」
帝人はからからと笑って、ほらどうぞと腕を広げた。罪悪感に似たものを感じると共にどき、と胸が高鳴るというよくわからない思いを抱きながら、俺はその小さな身体を優しく優しく抱き締めた。
100317