温度と一緒に伝わった恋/ヨハ十 | ナノ

「十代!」

十代の部屋のドアをばたんと勢いよく開けると、未だにベッドの上で一定のリズムで呼吸を繰り返し寝ている十代がいた。部屋の時計を確認すると、授業開始まであと10分しかないということにヨハンは舌打ちをした。なんとしてでも十代を叩き起こして授業を受けさせなければならない。というのはあと一度授業を欠席すれば、ついに出席日数が足りなくなるというところまできてしまったからだ。張本人である十代はそれを無視して寝ているのに、なぜ直接関係のない自分が崖っ縁に立たされているような焦燥を感じているのだろうか。だからといってヨハンがしてきた行為は焦燥から逃げたしたいという単なるエゴからではなく、十代にとってお節介だったわけでもない。ちゃんと十代を救っていたのだ。そして今も、ヨハンは十代の近い将来を左右する立場にある。

「じゅーだい、おーい起きろー」

十代の肩を揺さぶるとさすがに目を覚ましたようだ。十代はううん、と唸って、薄く開かれた瞳でヨハンを見つめる。

「んー…よ、はん?」

寝起きで舌ったらずな十代の声はほんの一瞬だけヨハンの思考能力をフリーズさせた。身体を起こした十代を抱き締めたい衝動に駆られたヨハンだったが、いつも通りに思考が戻るとその衝動はありふれた感情の中に埋もれて、ヨハン自身もそれに気付くことはなかった。そしてジャージのままの十代の手をぎゅうと握る。

「ちょっ、ヨハン?」
「授業遅れっから、そのまま行くぜ?」

そう言うや否や走りだして、ふたりは皆着席し始めているだろう教室へ向かった。その途中でヨハンは思う。自分はどんな気持ちでこの十代の手を取っているのだろうか。この手が十代のを握っているのは、ただ彼を教室へ引きずり込む役目があるというだけではない気がする。寧ろ手を握ること自体が目的であるような。繋いだ掌から伝わってくる温度が十代が好きだということをヨハンに気付かせるのはもう少し後のこと。





100316









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