一方通行のテレパシー | ナノ

渚が珍しく爆睡している。チョークが黒板に当たる音と、教師やクラスメイトが話す声しか聞こえない授業は久しぶりだ。おうむ返しのように教師の読む単語や文章を繰り返すだけのつまらない授業で、眠たくはないのに脱力して机に肘をついた。渚がいびきをかけばおもしろいのになあ。そうではなくても、寝息ぐらい立てればいいのに。心筋が何かに押さえつけられているように強ばっているようなこのよくわからない感じは、渚が起きて僕によくわからない笑みを浮かべてくだらないことを話しかけてくれたら治る気がする。ああつまらないな。本格的に腕を机の上に置いてその上に頭を横たえて、隣の静かに眠る渚を開ききらない目で見つめた。そして起きろ起きろとテレパシーを渚に飛ばしてみる。なんて、僕にはそんな力はないし渚も使徒であるとはいえ僕の心を読むことなんてできないだろう。寧ろできたら困る。なんでこういうつまらない授業のときに寝てしまうのだと思ったけれども、どの授業もつまらないので今が特別だというわけではないことに気付いた。起きていても僕の調子を狂わせるくせに、寝ていてもそれはかわらないらしい。そうやって渚関連のことを考え
ていたら、やっと彼は目を開いたようだ。嬉しいような悲しいようなとでも言っておこうか。

「おはよう渚」
「んーおはよう」

目をこすりながら言う渚はまだ眠たくてしかたがないというように細まった目で僕を見た。

「なんかシンジくんの声が聞こえた気がしたんだけどなあ」
「え、私語はしてないんだけど」
「ていうか、シンジくんに起こされる夢を見た」

どうやら使徒を侮ってはいけないらしい。僕がたまに思っていることを渚に知られるわけにはいかないから、渚がその夢を見たのはどうか偶然でありますようにと心の片隅で願った。






100312









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