好きとすきの境界線 | ナノ
講義を聞いて、その内容をノートに丁寧にまとめる。いつも、つまらない講義を今日みたいに聞いているわけではなくて、俺が今日こんなに真面目なのはテストが迫っているからだった。だが、隣の十代はそんなことはお構いなしで、かくんかくんと頭を揺らし、眠りにつこうとしているようだった。ここは友人として起こしてやるべきなのだろう。とはいえ、そう決意したところで起こせる自信は全く無いが。

「十代、起きろ」
「…ぅ…ん」

肩を軽く揺すって声をかけてみる。反応はあったものの、鼻を抜けた微かな声はすぐに寝息に変わってしまう。十代が悪い。試験直前になって、「なんで起こしてくれなかったんだ」なんて言われても俺は知らない…と思っていても、いつも駄々をこねる十代に負けて、一から解説してやるのが俺の役目になっているのだ。とことん十代に甘いのは自覚しているのに。だから、今日こそは起こさなければ、と二度目の決意を胸にして、再び十代の肩に手をかけた。

「じゅーだーい、おーきーろー」

先程よりも大きく十代を揺さぶると、彼はまたまた呻いた。瞼が動いたと思えばゆっくりと開く。

「ふわぁ、ん、ヨハ、ン?」

欠伸をしたせいで、涙の膜が張った目で見つめられた。いつも大きな目なのに、きらきらと光が反射するせいでいつも以上に大きく見えるそれは、一層魅力的に感じた。加えて上目遣いだなんて。意識は授業そっちのけで、十代の方を向いてしまっている。そのことにやっと気が付いた俺は慌てて口を開いた。

「十代、もうすぐテストなんだから、ちゃんと授業聞いとけよー」
「うう…だって眠いんだもんっ」

俯いて瞳をうるうると揺らす十代に、またもや俺は見とれてしまっていた。これは欠伸の涙なのに…ということは問題ではなくて、この心臓がどきんと高鳴ったのは何なのかとううことが問題であった。やっぱり、と思い付いた思考をすぎにかき消した。それにしても、「だもん」なんて言う男友達を寝させてやりたくなる俺は、やはり甘すぎるのだろうか。

「おれ、ヨハンに教えてもらうの、好き、だからさ…おやすみ…」

すう、と再び寝息を立てて寝入ってしまった十代を暫く見つめていた。ああもう、なんてこの子はかわいいんだろう。俺は机に突っ伏してしまって、どくんどくんと響く心音をただ聞いていた。十代の言葉に俺は期待、してしまったのだ。十代の言った「好き」はどんな好きなのだろうという疑問が頭の中をぐるぐると回る。どうやら俺は、恋愛的な意味で十代のことが好きなのだと認めざるを得なくなってしまったようだ。






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