夢のなかでも/真荒 | ナノ

ペダル/真荒



「あらきたさーん」

力いっぱい背中に飛びつかれて、前につんのめって危うく机で頭打つところだった。この真波という男はにこにこ笑って自分のしたいようにしかしない人間なのだ。二つも年下だからある程度は仕方ないとはいえ、周りを省みないという点では本当に子どもっぽい。

「うぜェ…」
「そんなこと言わないで。好きなんですってばー」

腰回りにまとわりついてくる腕は、引っ張って外そうとするほどきつく絞まる。雑誌を読んでいた目線をほんの少し後ろへ移すと、合わせるつもりもなかったのに目が合って、くすりと笑われた。絶対こいつ、俺が気にしてるって思ったから笑っただろ。むかむかした衝動のままに真波から目をそらしてやった

「構わねぇからな」
「くっついてていい?」
「勝手にしろ」
「わぁい!いい抱き心地だあ」

背中に頬ずりをされている気がする。何がいい抱き心地、だ。角張った身体のどこがいいんだか。こんなに適当にあしらわれても嬉しそうにくっついてくるのだから、俺のことが好きなのか、ただからかっているだけなのかわからなくなる。
真波は俺のことを好きだと言っていた。何度も何度も言われて、そんなに言われたら考えるしかないじゃないか。そこまで言っておいて後者だとしたらいい度胸だ。だが真波のことだからありえないこともない。ああ、また考えさせられているなあ。
ずるずると真波の腕がずり下がってきて、背中の重みが増してきたような気がする。耳をすませばすうすうとゆったりとした呼吸が聞こえてくる。

「だーもう、なんで寝てんだよ…」

振り返ると俺を抱き枕のようにして真波は眠っていた。あの締まりのないにこにこした顔のまま寝ているから、起こすに起こせない。容赦する必要なんてないのに、大概俺も真波に甘いらしい。

「あらきたさん、すき」

むにゃむにゃ動く唇が多分そう言った。寝言なら信じていいのだろうか。

「俺も、」







101015










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