獏良とバクラ/DM
「さすがは僕の身体なだけのことはあるよね」
「は?」
宿主は俺の顎を人差し指で掬うようにして持ち上げた。鼻先が着くか着かないかというところまで顔を近づけたこいつは、にこにこと屈託の無い笑顔を向けてくるくせして、視線だけはじとじとと粘着質なのだ。そういう行動が相反しているところが、何を考えているのかわからなくて苦手だ。
「やっぱりイケメンだなあ」
「褒められてるのになんか腑に落ちねえ」
「素直に喜べば?」
「はいはいっと」
「ええーバクラかわいくないー」
「俺様がかわいいわけねえだろ。逆にきもいわ!」
「わかってないなあ」
至近距離で宿主が笑う。その息が首にかかってぞわりと鳥肌が立つのを感じた。空気の流れは止まったように静かになって、それを壊してはいけない気がしてしまった。ただ難しい顔をして宿主を見ていることしかできないでいたら、そのまま唇に押し付けられた。何がって宿主の唇が。みるみる頬に熱が集まっていくのがわかる。
「なっ…」
「ほーらかわいいじゃん」
そう耳許で囁く宿主に、俺は何も言い返せなかった。
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