短文 | ナノ

豪炎寺と風丸/inzm


クシュン、と向かいでくしゃみの音が聞こえた。日誌を書く手をとめて、そちらをちらりと見やるとちょうど風丸がぶるりと震えたところだった。

「寒い?そろそろ帰るか?」

斜光で薄く朱色がかる教室に、ぽつんと俺の声が浮いたように響く。日誌を書き終えないままに閉じると、風丸は困ったように眉尻を下げた。

「まだいるから」
「だが、風丸」
「ああもう、わかってないなあ豪炎寺」

風丸は向かいに座っていた席から立ち上がって、新しく隣に寄せた椅子にすとんと腰を下ろした。

「こうしてたら寒くないぜ」

俺の左腕を抱き枕みたいに抱きしめて風丸はもたれかかってきた。それこそ日誌を書くどころではないわけで、使えない左手のかわりにシャープペンシルを手放した右手で風丸の赤い頬に触れた。





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