あの後、学校でなまえの姿を見ることはもうなかった。
朝から何度もなまえのクラスに通いチラチラと教室のドアや窓からなまえの姿を探した。が、見当たらず授業と授業の合間でさえもなまえの姿を探していたおれにいい加減気づいたのかクラスの子がなまえが早退したことを教えてくれた。どういうことだよ、と今の状況をまるで理解出来ない。あれから連絡は一切来ていない。募る不安は拭いさられることなくどんどん蓄積されているばかりだ。どこにいる、何をしている、といった類いのメールを何度も送るもいつまでたってもなまえからの返信は来ない。さっきまで無駄に何件もメールや電話を掛けてきていたのにどういうことだ。
「おいエース!!」
携帯のディスプレイを覗き込んでいたおれに廊下の向こうから少し必死そうな声が聞こえてきた。それもそのはず、マルコが息を切らせて走ってきたのだ。あまりにも必死な表情だった為少し不安になった。
「どうかしたのか?」
「…ああ、なまえからの伝言を預かってたんだよ」
伝言?何だ伝言って。面と向かっては言えないことなのか?そう考えるとタラリと流れる背中の冷や汗。よく聞けよ…、と凄むマルコにゴクッと息を飲む。
「『このそばかす野郎!』だってよい」
「うるせえよ!!」
「伝言だよい!」
「伝言かよ!」
マルコが息を切らせて走ってきた意味が全く理解できなかった。こんなけの為に走ってきたことは感謝せねばなるまいのか…、いや、笑っているぞこいつ。確信犯だな。このせいでなのか、呆気なく毒気は抜かれなんだかどうでも良くなってしまった。いや、良くないんだが。
こう考えても仕方がない。四時間のチャイムが鳴ったのを切っ掛けにおれは早退を取らせてもらい、なまえの家に急いだ。