「…あいつはいつまでああしてるつもりだよい」

「……」

マルコの言うあいつ、と言うのは昨日おれらが連れてきたなまえだ。ここの雑用係に任命されてから甲板の隅っこで体操座りをしてうずくまっている。あいつ…昨日からずっとあそこから動いてない。

「おいエース。どこ行くんだよい。…やめとけ、あいつは危険だ」

マルコは意味なく凄んで言ってきた。ただ単に今の台詞が言いたかっただけだろう、おれはマルコの制止の意見も聞かず、スタスタとうずくまっているなまえの目の前まで行く。するとおれに気づいたのかピクッとなまえの体が動いた。

「…何よ」

「別に」

「みんなのパンツなんか洗わないわよ」

「パンツ限定かよ。おまえ雑用係が仕事放棄はダメだろ!…つかお前いつまでそうしてるつもりだよ」

「うるさいわね!わたしを船から降ろしてくれるまでに決まってるでしょ!」

「そりゃムリだな」

「この意気地なし!オタンコナス!おまえのマルコ出べそ!」

「知るかよ!おれのマルコじゃねェし!」

ツーンと言い放ったなまえ。おれはハァと溜め息をついた。するとなまえは少し顔をあげて「…ねぇ」と言ってきた。

「…?何だよ?」

「…錠も枷もつけずに…わたしを船に置いといていいの?」

「…!!クックック!」

おれはその言葉を聞いて思わず笑ってしまった。すると驚いたように顔を上げたなまえ。目が赤い…何だ、こいつ泣いてたのかよ。おれが笑っているとブスッとした顔になったなまえ。

「な、なんで笑うのよ…!!失敬な奴ね!」

「いやな、ククッ…昔のおれを見てるようだなーって」

「昔…?」

「そ、おれも昔な、おまえみたいに船に置かされてたんだよ。まぁ理由は違うけどよ」

おれはきょとんと首を傾げているなまえの目の前にしゃがみ、目尻に溜まった涙を指で掬いながら話す。

「なぁ、腹減ってねェか?おまえの飯残ってんぞ?」

「フン!減ってるとお思いで?」

すると突然グーと言う腹の音が当たり一面に響いた。するとなまえはボンッと顔を赤くして俯いた。おれはまたしても笑ってしまった。

「ハハッお腹は正直じゃねェか。飯持ってきてやるよ。ここのコックの作る料理はうめェぞ!」

「…う…」

なまえの沈黙は肯定と取った。おれは、すぐ来る、と言ってその場を後にした。

キッチンに向かってる途中、マルコが壁に寄りかかって立っていた。

「よおエース。なんだ、あいつにお熱かよい」

「馬鹿ちげェよ!……なんかよ、あいつ見てると昔の自分思いだすんだよ。嫌なくらい」

「…あぁそう言えばな。あの体操座りとかな」

だろ?と言って笑うおれ。するとマルコはフッと笑って、あいつの世話係は任せるよい、と言って去って行った。マルコ逃げる気だなと、おれは悟りキッチンに向かった。

おれはなまえの分のスープを持ってなまえの所に戻った。変わらず体操座りだ。

「飲めよ。うまいぜ?」

コトッとなまえの横に置く。するとおずおずとスープに手をつけるなまえ。口元に持って行き、一瞬躊躇したがズズッと一口飲む。

「…おいしい」

「だろ?」

ポツリとおいしいと呟いたなまえ。そして顔を上げてフワッと微笑んだ後「エース、ありがとう」と言ってきた。

不覚にもドキッと胸が高鳴った。おれは「お…おう」と照れ隠しに鼻をかく。まさか名前を呼ばれるとは思わなかったぜ…!ツンデレというのかこういうのを…!

「……なぁ…何でおれたちが白ひげを"オヤジ"って呼んでるか教えてやろうか?」おれはそう言い、なまえの隣に座った。


打ち解ける思い

(…あー。あいつあんな顔できるんだなァ。エースやるよい。)

(でなオヤジはビックな男だ!そう下もビック!)

(下ネタかよ!!)



 

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