気づいたらそこは見知らぬ船の上でした。 「よう。嬢ちゃん開いた口が塞がってないぜギャハハハハ!!」 「………」 「ギャハ!ギャハ!ギャハ…」 「………」 「いい加減口塞げよ」 目の前には厳つい男達。見たこともないから、多分名もない海賊団なのだろう。 そしてわたしは今ロープでグルグルにされ動けない状態だ。 ああそうか、わたし拐われたんだ。 エース達と離れて一人たそがれてたら、いきなり大きな袋を被され変な薬を嗅がされて…ッは!そういえば変な薬を嗅がされると何かが小さくなると聞いたことがある…… !? わたしは胸に違和感を覚え、ペタペタと胸の何かを確かめる様に触った。 「胸が……ない…っ!?」 「いや元からなかったぞ」 わたしは衝撃的な事実に目を大きく見開き凄んだのだが、即座に聞きたくもなかった台詞を意図も容易く言い放ったガチムチな男。ガチムチだからって嘘はついてはいけない、自分が胸筋あるからって人に嘘はついてはいけない。わたしはそう思いながらも、最初から分かっていたさと溢れてくる涙を堪える為に上を向くしかなかった。 ふと、周りを見てみるが海、海、海、男共しかいない。アホらしい茶番劇で忘れてたが、ていうかどこだろここ?さっきのわたしがいた島はどこ?ていうかここどこ? 先ほどの夏島に比べ少し肌寒くなったことから、あそこの海域から少し離れたんだということがわかった。 ……あぁ、わたしみんなと離れちゃったか。 みんな今どうしてるかな…? ボケーとそんなことを思った。悲しい気持ちはあるが、それ以上にみんなと離れて少しほっとした気持ちがあった。だって、なんか、みんなと会わせる顔がない。あの2人にあんなこと言っちゃったし…。特にマルコ。あいつ糞野郎。 ってみんなのことなんかわたしには関係ないし。わたし海賊じゃないし。結局はわたしたちは相反する立場。 …これでよかったと、思わなきゃ。 先ほどとは打って変わり、しょんぼりとそんな事を考えてたら、目の前の男共がわたしを見ながら 「おい、なんかしょんぼりしてるぞこいつ」 「な、なんかおれ悪いことしたかな?汗くさくない?」 「何言ってんだよおまえバカか?、そういうおれはちょっとこの子のお母さんを探してくるわ」 「お前ら落ち着け、お母さんを探しだしたとこでこいつの胸は大きくならないぞ!それより島までもう少しだ!売るまで気を抜くな!」とヒソヒソと言ってる。 売る? あぁこいつ等わたしを売る気なんだ。なんてお下劣な人たち。みんなとは全然違…、ゴホン!わたしはもう白ひげのみんなのことは考えないの!!! あいつらだって?寧ろわたしがいなくなって万々歳って思ってる!思ってないはずがないし? …はッ!ふざけんなよ汗臭い男共!誰があんたらの小汚ないパンツを洗ったと思ってんのよ! ギリッと歯を食いしばり、沸々と煮えくり返る心情を押し殺す。そうだ次の島に着いたらバックれよう。でもバックレた後どうしよう。…何も考えつかない。本当だったら白ひげのみんなとかエースとかマル……!、ああもう!!なんであいつらのこと考えちゃうのよ…! 先ほどから何度も考えてしまう彼らのことを頭の中から一掃する様にわたしは隣にある柱に頭をガンッガンッとぶつけた。 そしたら目の前の男共が、「やっぱりこいつおかしくないか!?」「海に捨てようぜ!」「まぁまてもうすこしの辛抱だ」とか言っている。この人たちの中でわたしは頭のおかしい人にランクアップしたらしい。 わたしは今まで一人で生きてたんだもん、今さらどうってことない。むしろ一人になってよかったじゃん!わたしはこれを望んでたんだし!よかよか!天晴れ! 一人高笑いをしていたら目の前の男共が「頭やばいってこいつ!絶対イカれてるぞこいつ!」「クレイジーだ!」「oh!クレイジー!」とか言ってきた。この人たちの中でわたしは頭のおかしい人からクレイジーガールにランクアップになったらしい ていうかわたし、よくよく考えたら金も何もないじゃん。あると言ったら監視役が持っているわたしの愛刀が2つと、袖の中に隠している護身用の短剣が1つ。それだけがあれば充分。わたしは逃げる算段をし、まだ見ぬわたしのこれから先を思った。 そんなこんなしていたら、島に着いたらしく、ガコンッと船は止まった。男達が次々と降りていき、ひょろ長い男がわたしを軽々と担いだ。 なんかこの光景、デジャブ。 でもあの時とは違う。何故ならばあの時わたしは亀甲縛りだったのだから。 「へっへっへっ、年貢の納め時だなお嬢ちゃん。可哀想だが、運が悪かったとでも思いな」 「…同情するなら売った額ちょっと分けなさいよ」 「は?」 「わたしが8割。あんたら2割が妥当だと思います」 「はぁ?おまえ売られるんだぞ?」 「なに?ケチくさいわね。同情するなら金をくれ!これ常識でしょ?何度も言わせないで恥ずかしい!」 「恥ずかしがってんじゃねぇよ!」 男とのいがみ合いが加速する中、わたしはバレない様袖に隠しておいた短剣でジリジリとロープを切っていた。 よしあと少し! シュッという音がした後パラリとロープが外れ、自由になった体。その事に驚き、一瞬躊躇した男の首の後ろにトンッと手刀を入れる。そこまで威力はなかったが、前かがみに倒れ込む男。その隙を狙い男の腰にぶら下がっているわたしの愛刀を奪い取った。 そのせいでただごとじゃないと感じ取った周りの男達が戦闘態勢に入った。 わたしは構え、次に迫り来る男に意識を移した。 右ほほに刺青のある男がわたしにむかって両手剣を振るう。剣を振った直後には大きな隙ができる。わたしはその隙をつくため、降り下ろされた瞬間に右に逸れ、男の鳩尾目掛けてひじを入れる。手応えから鳩尾ヒット。 二人目を倒した後、騒ぎを聞き付けてか、増えてくる男共。 これは面倒くさい。わたしはため息を吐き、愛刀を鞘に納めたまま男共めがけ刀を振るい 「悪いけど、あんた達相手に刀使わないから」と、挑発した。 何でって?むしゃくしゃしてるから。 その発言を聞き、男達は叫びながらわたしに向かってきた。 忘れようと思えば思うほど 頭に浮かんでくるのは彼らのことで |