「ぬあんでわたしがエースと一緒に行動しなきゃいけぬあいんですか?」

「しょーがねぇだろうが、そうなったんだから。おれの気持ちにもなれよ、おまえと一緒に行動するおれの気持ちに」

「とても喜ばしく天にも昇る気持ちってことでしょ?」

「……」


ここは夏島。わたしが白ひげ海賊団の雑用係になってから初めての上陸だ。ここの島には大きな街があるってことでもう超テンション高くってフィーバーしてたのに、あのバナナことバナナがわたしの上陸を阻止し「おまえはエースと一緒だよい」とか言った結果こうなったのよ。哀れわたし。あのバナナ賞味期限切れて脳ミソ腐ってんじゃないの?


「チッ」

「舌打ちやめろよ」

「チッ…!」

「…そこまで嫌がられるとおれ悲しいんだけど…、つかおまえドジだから迷子になるとかマルコも思ったんだろ?」

「違うわよ!わたしがこの上陸を機に逃げ出すと思って見張りをつけたんだわ」

あのバナナ何かとわたしに突っ掛かってくるし、最初なんか亀甲縛りしようとしてたし…!
何だかんだわたしの嫌がることをしてくる。最近なんか特に酷い!絶対わたしのこと嫌いだよね!わたしだって海賊なんか…!

……でも…だからといって

「別に…、こんな卑怯な手で逃げ出すなんて、しないのにっ…」

「…なまえ」

認められていないっていうか、信じてもらえてないっていうか、まぁわたしが賞金稼ぎなんだから当たり前なんだけどね。でもなんだか…複雑な気持ち。
ていうか別に仲間でもないっていうのになんでこんな気持ちになるのかな…

悶々と考え事をし、無意識に道端の石を蹴っていると、エースがポンポンとわたしの頭を叩いてきた。

「な…なに?」

「べっつにー、おまえ可愛いなって思って」

「はっ!?」

「驚きすぎ…、マルコもああ見えてなまえが心配なだけだって、なまえのくせに考えすぎだろ?」

ほれ行くぞ、なんてわたしの頭を思いっきりクシャクシャにして歩いて行くエース。


…天然タラシの毛あり
でもなんだかんだ心が軽くなったので何も言わないでおこう。


その後はエースと一緒にプラプラと街を見学。本当にでかい街で道も複雑である。うん、これは迷いそうだ。もしかしたらさっきエースの言ってたことは本当かもしれない。…そうだったら、いいな。でもバナナに限ってそれはないか。

「あ」

「お」

「げっ」

噂をすればなんのその、忌まわしいバナナのご登場。言わずもがな「げっ」はわたし。

「…『げっ』となんだよい、『げっ』とは」

「バナナにげろりんしちゃうって事」

「今すぐ海の藻屑にしてやるよい」

バナナがこちらに向かってこようとした為、まぁーまぁーまぁ!、と言いわたしたちの間に入り仲介をするエース。怒りの矛先が変わった。

「地球語で話さなきゃ伝わらないよエース?」

「おまえ意味不明な言葉を使うほどバカだったかよい?」

二人から送られる冷めた目線に負け、くっ…!なんでおれが…!とか言って涙を耐えるエース。その間にもわたしとマルコの周りに漂う異様な空気は勢いを増していた。

「ちょっとそこ退いてくれませんか?なんか黄色いバナナがあって道が滑りそうで恐くて通れませんけど?」

「どこにそんなおもしろいバナナがあるんだよい?見えないけどねい、おれには。な?エース」

「え…?そ、そうだな?」

「エース!あなたの目は節穴?見えるでしょこの可笑しいけど笑ったら申し訳ない頭が。ね?エース」

「え…?そ、そうかな?」

だからなんでおれ…!?とか言うエースを尻目に、ヒートアップするわたしたち。にらみ合いが続く。

「もう埒があかない。エース行こ!」

エースを呼び、わたしがバナナの横を通り過ぎようとした時、


マルコが重たい口を開いた。


「…いつ逃げ出す計画をしてるんだよい?」

「…!?」

ドクンと胸が鳴った。

「おれらをいつ海軍に売るか考えてんだろい?まぁここじゃエースがいるんで邪魔だから…

「おいマルコ!!!」

エースが大きい声を出し、バナナの淡々とした口調を遮った。そのことにバナナは驚いた様に目を開き、エースを見、わたしを見た。

「…っ…わたし、だって…、好きでこんなとこにいるんじゃない!!」

わたしは力の限りそう叫ぶともうがむしゃらにその場から逃げ出した。

後ろから、「なまえ!」と叫ぶエースの声が聞こえたが、関係ない。今のわたしの顔なんか見られたくない。


どのくらい走っただろう。さっきまで明るかった空が、もう大分暗くなって曇っている。あー雨ふりそ。街中の店等も電気を消し、シャッターを閉め出している。わたしは乱れた呼吸を整える為、近くの街灯の下に座りこんだ。

…エース心配してるかなぁ。オヤジとかサッチとかみんな、わたしの心配とかして…る訳ないか。仲間じゃ…ないもんね。…さっきのマルコの言ったことは正論。所詮は賞金稼ぎと、海賊。相容れないのは当然。みんなわたしと一緒にいるの嫌だったのかも…しれない。

「はぁ…」

落ち込むとどこまでも落ち込む。もう考えるのヤメよ、と思った時ふと頭を過った。

エースも、わたしと一緒にいるの…

「……あ」

まるでわたしの思考を遮る様にポタポタと降りだした雨。わたしは何も考えない様目を瞑り、キュッと手で体を包みこんだ。


忍び寄る影に気がつかずに


浮かび出した疑問は止まることなく

 

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