わたしが海賊を嫌いな理由を、エースは聞いてきた。

多分ずっと気になってたんだろうな。聞いてきた時のエースの声、不安そうだったもん。
エースが撫でてくれた手があまりにも優しくて、涙が出そうになった。

その優しさに応えたくて、重い口を開いた。

「わたしが14歳のころの話でね…」

フラッシュバックの様にあの時の光景が頭を過る。

燃やされる家々

逃げ惑う人々

下劣な笑い声

そしてわたしの…お父さんとお母さん



「…やっぱいいわ」

その声でハッと我に返った。顔を上げると眉間に皺を寄せたエースがいた。するとエースは何も言わずにわたしの頭をくしゃっと撫でてくれた。

その時、わたしの眼から涙が落ちた。え?と思い、涙を拭おうとすると、わたしの手が震えていることに気づいた。手だけじゃない、身体全体が震えていた。

あぁわたし、エースに変な気を遣わせちゃったと思いごめんなさい…と小さな声で謝った。

「…何で謝んだよ。おれこそ悪かった…嫌なこと思い出させたな」

エースが罰の悪そうな顔をするのでわたしは咄嗟に頭をフルフルと横に降る。わたしが弱いのが悪いのに、エースが謝ることない。そう思い、言わなきゃ…!と口を開けるも肝心の声が出なかった。なんで…!わたし…

「待ってる」

その声に、顔をあげる。

「なまえが言える様になるまで、待ってるから」

だから、無理すんな。
エースの言葉が、胸に響く。

わたしは申し訳ない気持ちと嬉しい気持ちがごちゃまぜになった様な変な気持ちになり、涙を止めることができなかった。

「…女を泣かす男にゃあ、なりたくなかったがなぁ。あ、おまえ女じゃなかったっけ?」

「…っどーゆー意味よ!」

エースがいつもの様にとぼけた感じで冗談を言ってきたのでいつもの様にツンとして言い返した。
悪い悪い、と笑うエースからエースの不器用な優しさを感じた。

馬鹿だなぁエースは、でもありがとう。わたしは心で感謝した。


不器用な優しさ

(もう寝ようぜ)

(うん)

(…襲うなよ?)

(…)

(あ、無視ですか)



 

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