「…ヒポポタマスが世話になったな」

怪訝そうな顔でキッドの顔を見もせずそう吐き捨てるトラファルガー。見て分かるようにすこぶる機嫌が悪い。そしてなまえに八つ当たりするが如く「おい起きろヒポポタマス」とトラファルガーの無表情のまま容赦ない愛の往復ビンタがぺんぺんぺんぺんと繰り広げられる。そんな無情な仕打ちにキッドは「やめてやれよ!可哀想だろ!ヒポポタマスが!」と声を張り上げた。男2人にヒポポタマスと言われるなまえも非常に可哀想である。

目覚めないなまえにため息をつき埒が明かないと思ったのだろうそれよりも早くこんなとこからなまえを連れ出さなければと思ったのか、よいしょ、と寝ているなまえを背に担ぐ。心なしかなまえの体温がいつもより高い気がしたトラファルガー。

──また肝心な時に おれはこいつの側にいられなかった

なんて無能だと心の中で己を罵倒した。沸々と煮えたぎるやり場のない怒りを耐える為にギリッと歯に力を入れる。しかしこんな情けない姿ユースタス屋には見せられねぇ、見せたくねぇ、と目を伏せるしかなかった。本当ならば今頃頭に血が昇ってこの目の前の男に理不尽な八つ当たりをしているはずなのだろうが今のトラファルガーには熱に苦しむなまえの心配と己の無力さに対しての悔しさで頭がいっばいになっているのだ。冷静さを保っている様に見えるが内心気が気ではない。

「お前には二度も迷惑をかけたな。もうかけねぇ」

「…別に迷惑なんざかけられた覚えはねぇよ。テメェが好きでやったことだ。それに」

「じゃ」

キッドが言い終わる前にスチャッと片手をあげて颯爽と出ていこうとするトラファルガーを「待て待て待て待て!!」と必死に引き留めるユースタス。

「何だよ、ウザい。未練がましい男だな」

「ウザいってなんだよ!最後まで聞いてけよ!!」

「何かいいこと言ってるみたいで腹が立ったからよ、仕方ねぇだろ腹が立ったから」

「二回も言うなよ!どんだけ腹が立ったんだよ!?」

何かと突っかかるキッドにはぁとため息をつくトラファルガー。元はと言えばトラファルガーが悪いのだが当の本人は何こいつめんどくせぇと微塵も悪びれた様子もない。そんな二人の小競り合いが耳に触ったのかなまえがもぞっとトラファルガーの背中で動いたのを感じて二人はハッと口を閉じた。

「う…、ん、行かないで…」

一瞬起きたのかと焦った二人なのだが寝言を言っただけだと知りホッと一息をついた。

わたしのことは…いいから…早く荒ぶる…狸を……

奇妙な寝言に二人は黙るしかなかった。



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