なまえが熱を出して早退したとのことをなまえの友達から聞いたのは放課後のことだった。昨日の件もありどことなしか会いづらい気もしうやむやと会うか会わないか考えていたトラファルガーだったが気づいてみればなまえの教室の前まで来ていた。そのことに先程まで考えていた悩みもどうでもよくなり、おれも相当重症なようだ、と己を自嘲気味に笑うしかなかった。なまえに会う為教室の扉に手をかけたのいいが教室には探し人は見当たらなかった。いつもならトラファルガーが来るまでしっかりと教室で待っているなまえ。例え遅くなっても迎えにくるまでは必ずいるのだ。教室で飼っている金魚に餌をあげていたり、金魚の水槽をせかせかと掃除していたり、金魚に話かけていたり、極たまに一人オセロをしていたりと友達は金魚しかいないのかと言いたくなるほどどことなく寂しい待ち時間なのだが必ずトラファルガーが来るのを待っていた。そんななまえが今日は見当たらない。と、昨日の、なまえの怯えた顔がフラッシュバックとして頭を過った。そのことにトラファルガーは少しばかりの焦燥感に駆られた。もしや…おれを避けて…?

「あれ?どちらさま?」

ふいに後ろから聞こえた声にバッと振り向いた。そこには待望したなまえ、ではなくなまえの友達のキューピーがトラファルガーの勢いよく振り向いた顔に驚いた様子で立っていた。「なんだ…マヨネーズか…」となまえではないと瞬時に理解したトラファルガーあからさまに落胆したを見てニタァとした笑みを浮かべたキューピー。

そしてなまえが熱を出して早退したことを知った。そして、昨日の件に頭を悩ませていたことも。悩む頭があったのかと驚愕したがそれよりも自分のことを意識してくれたのではないかという淡い期待が勝った。悩むということはそれなりに意識してくれたということだろう、と。なまえがおれを男と認識しなおかつ意識させるというとこまで長期戦と踏んでいたのだが、これならば話は早い。短期決戦と洒落込むか、と物事が順調に進んでいるのでのかもしれないことにトラファルガーは口角が上がるのが分かった。しかし、それよりも今は熱を出したというなまえの安否確認が優先である。なまえのことだから熱に浮かされぶっとんだ思考で何かやらかしているかもしれない。そんな不安を胸に先程から何度も電話をかけているが繋がらない。電話口から聞こえる無機質な音が徐々にトラファルガーの浮き足立った気持ちを掻き消すのは簡単だった。

そして何度めかのコールの後に聞こえてきたその声はトラファルガーが一番聞きたくなかった声であった。




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